みずほフィナンシャルグループ(FG)が新たなタイプの普通株増資に踏み切るとの観測が強まっている。国際的な資本規制強化の流れに対応するため、年末年始を挟んで三菱UFJフィナンシャル・グループと三井住友フィナンシャルグループが相次いで巨額の普通株増資を実施。自己資本でライバルに劣るとされるみずほも「待ったなし」とされるが、株価低迷の折り、1株当たりの価値が希薄する大型増資には踏み切りにくい。
このため、既存株主の不満を和らげられる「ライツ・イシュー(株主割当増資の一種)」を実施する案が浮上している。
既存株主に対する影響はほかの2メガバンクより大きい
ライツ・イシューは、既存株主に無償で新株予約権を割り当てる増資方法。株主が予約権を行使して新株を購入すれば、持ち分が増える。予約権を市場で売却し、増資による希薄化の損失を埋め合わせすることも可能だ。欧州では増資の主流となっており、東京証券取引所も2009年末に新株予約権のルールを緩和し、この手法を利用しやすくした。
みずほは2010年春にもライツ・イシューによる増資に踏み切るか検討を進めている模様だ。ただ、みずほの株主は約63万人に上り、三井住友FGの2倍の規模。事務手続きが膨らみ、通常の公募増資に比べて資金調達に時間がかかる可能性が高い。
それでも、みずほが株主への配慮を迫られるのは、株価が三菱UFJFGや三井住友FGに比べて軟調に推移している上、03年に実施した1兆円増資(優先株)の普通株への転換が残り、さらに巨額の普通株増資に踏み切れば既存株主に対する影響は2メガバンクより大きいと見られるためだ。
三菱、三井住友とも「これで増資は打ち止め」
主要国の金融監督当局で構成するバーゼル銀行監督委員会(本部・スイス)は09年12月、銀行に対する自己資本規制強化について、完全実施までの経過措置を「十分に長期にわたり設ける」とした。しかし、金融危機で打撃を受けたみずほが、短期間で利益を蓄積して資本を厚くするのは難しく、近いうちに増資を迫られるのは必至だ。
メガバンクでは、三菱UFJFGが09年12月に1兆円増資に踏み切ると、三井住友FGも年明け早々に普通株増資を宣言。三菱同様、最大9730億円の増資を実施すると決め、リーマン・ショック後の増資レースは2巡目に入った。三菱、三井住友とも、今のところ「これで増資は打ち止め」との姿勢を鮮明にし、希薄化のしわ寄せを受ける既存株主の顔色をうかがっているが、成長戦略不在の増資では、いずれ株主の信認を失い、株価低迷の形で跳ね返ってくる。みずほFGは株主への影響を見極めた上で、増資の時期や規模を詰める考えだ。