売上げが低迷する百貨店と絶好調のネット通販が組み、大規模な物産展を開催するという試みが始まった。百貨店にとってはお客を呼び込む目玉になるし、ネット通販にとっても新規客を取り込めるというメリットがある。また、通販と違って試食ができ、送料がかからないのでお客にも好評だ。
ヤフーが運営する通販サイト「Yahoo!ショッピング」に出店する47店舗が集まった物産展「人気グルメ&スイーツお取り寄せ市」が、2010年1月21日から西武池袋本店で開かれている。24日までに9万5000人のお客が詰めかけて、地下食品売り場に活気があふれた。27日まで開催する。
47店舗中30店以上が初登場
ここ数年、スイーツやグルメのネット「お取り寄せ」が人気だ。店が遠くて買いに行けない人に便利さがうけている。一方で試食ができない、送料がかかるので少量では買いづらいというデメリットもあるが、今回は百貨店とあって幅広いお客が集まった。
中でも人気が高いのは、「お取り寄せランキング」で56週1位を記録したオーガニックサイバーストアの「濃厚ミルクシュー」だ。西武池袋本店の広報担当者によると、1日あたり800個前後を用意しているが、開店からまもなく売り切れてしまう。
「宇治抹茶ロールケーキ」(伊藤久右衛門)は100人の行列ができ、抹茶ロールケーキが2時間で完売した。ほかにも、モンドセレクションで2年連続最高金賞を受賞した「超厚バウムクーヘン」(モンテール)や自家製のババロアを包み込んだ「泡のようにとろけるスティッククレープ」(3時の森)など「お取り寄せ」で人気のスイーツがずらりと並ぶ。大きさの異なるカニやウナギを集めた「ワケありグルメ」も売られている。
西武池袋本店の広報担当者は、
「通常の物産展では毎回決まった店が集まってしまい、マンネリ化する傾向にありましたが、今回は47店舗中30店以上が初登場です。1月24日までに販売目標の150%を達成し、当店で人気の物産展『北海道展』と並ぶ勢いです」
と驚いている。
企画を持ちかけたのは西武池袋本店だが、ヤフー広報担当者も、
「思った以上に反響があり、他の百貨店からも問い合わせが来ています」
といい、両者にメリットがあったようだ。
東武百貨店池袋店は「楽天市場」とコラボ
2010年3月25日から東武百貨店池袋店では「楽天市場うまいもの大会」が開催され、「お取り寄せ」で人気の50店舗が集結する。
楽天の通販サイト「楽天市場」のスイーツジャンルで09年に大賞を受賞した「お芋専門店のスイートポテト」(おいもや)、関西で話題の「神戸魔法の壷プリン」(神戸フランツ)といったスイーツや、弁当、総菜が登場する。中でも目玉となるのは、六厘舎の「つけめん」が食べられるイートインコーナー。大崎の店舗には常に長蛇の列ができ、楽天市場でも2010年4月発送分まで完売している。
企画を持ちかけた楽天の広報担当者は、
「お取り寄せグルメが好調とは言っても全体的に消費が盛り下がっているので、消費を喚起する企画になればと企画しました」
と言っている。
50~60歳代のお客が多い東武百貨店池袋店と、20~30歳代が中心の楽天市場が組むことで、両者にとって「新しい顧客層を開拓する」という狙いもある。中小企業基盤整備機構が共催し、地方で眠っているおいしいものも紹介する。
ネット通販と百貨店のコラボは「Yahoo!ショッピング」が06年と07年に銀座三越に15~20店舗を出しただけで、ヤフー、楽天とも今回のような大規模な試みは「初めて」と言っている。ほかの百貨店から注目が高まっていることもあり、新しい物産展として今後も広がりそうだ。