「自動車の将来主流となる環境技術はハイブリッド(HV)なのか、電気自動車なのか、燃料電池車なのか、どれになるのかわからない。優劣がつけられない以上、3つとも同時に並行してやらざるを得ない」
ドイツのフォルクスワーゲン(VW)と資本提携したスズキの鈴木修会長兼CEOは2010年1月21日、東京・有楽町の日本外国特派員協会でVWと共同開発する環境技術の内容について質問した私にこう答えた。また中国市場におけるVWとの協力内容については「販売、生産、商品開発のいずれかといわれれば、販売はそれぞれが独自に競争しながらやったほうがよいので、生産と商品開発の協力を優先的に取り組むことになるだろう」と指摘した。
VWとスズキは2009年12月、VWがスズキに約2200億円出資して連結対象とならない範囲の19・9%の株式を取得、スズキもVWにその半額程度を出資し、競争が激化する自動車業界で生き残るため相互協力することで合意した。鈴木会長は21日その具体的内容に言及した。
「VWには高校、大学の家庭教師として指導を願いたい」
「スズキは自動車事業をスタートさせてからまだ30年。世界の自動車業界から見れば中小企業だ。1981年から提携した米GMとの関係は2009年で終了したが、GMからはクルマ作りの技術を教えてもらった。GMには小学校と中学校の家庭教師をやってもらったが、VWには高校、大学の家庭教師として指導を願いたい」と強調。スズキとしてVWにできることについては「欧州で売れるクルマがアジアでも売れるとは思わない。その点でスズキはインドやパキスタン、インドネシア、ベトナムなどで経験があり、お役に立てると思う」と語った。
2008年の自動車の世界販売台数ランキングは1位がトヨタ自動車の897万台、2位が米GMの835万台。VWは623万台で3位、スズキは236万台で9位。2009年1-6月のランキングでは1位がトヨタ自動車の356万台、2位のGMが355万台でともに前年同期比20%以上も減らした。これに対し減少率が相対的に低かったVWは312万台で3位ながら1,2位に肉薄、スズキも9位ながら115万台で、両社を合わせると427万台でトヨタ自動車を抜いて世界首位となる。しかし鈴木会長は「台数だけでトップというのは間違いだ。大手が1台500万円から800万円のクルマを売っているのに対しスズキの軽自動車は1台50万円から100万円だ。従業員たちがそこを理解せずに世界一と錯覚すると失敗する」と強調し、「中小企業のオヤジ」であることを改めて自認した。