今、書道が注目を集めている。それも、紙に向かって一人書くものとは少し趣向が違って、ダイナミックなパフォーマンスを取り入れたものだ。段々人気が出て、「書道ガールズ甲子園」と銘打った大会も行われ、その映画化も決まった。
愛媛県四国中央市では「全国高校書道パフォーマンス選手権大会(通称:書道パフォーマンス甲子園)」が行われている。2008年に行われた第一回大会には3校が、翌年の第二回大会には5校が四国中国、九州地区から出場した。2009年は観客1000~1500人を集めたという。
手拍子やダンスパフォーマンスも見所
書道パフォーマンスは、女子書道部員10人程度でチームを組み、4m×6m四方の巨大な紙の上を踊りながら、「書」を書き込んでいく。制限時間は6分以内。墨だけでなくカラフルな色を使って、紙に各校のテーマに沿ったメッセージが書き込まれていく。BGMには流行の邦楽や洋楽がかかり、手拍子やダンスパフォーマンスも見所だ。衣装も袴だったり、キャミソールだったりと工夫を凝らしている。
書道パフォーマンスはもともと、愛媛県立三島高校が部活動の一貫で市内のスーパーやショッピングモールで披露していたものだった。これが好評だったので、大会が「四国中央紙祭り」のメインイベントとして行われることになったのだ。四国中央市の地場産業は紙。大きな紙を用意するのはお手の物で、まさにうってつけの企画だった。
四国中央市教育委員会の担当者によると、こうした下地があって、学校同士が競うイベントへと発展した。2009年の本戦出場は5校だったが、問い合わせは10~20件寄せられている。大会当日は、自分の学校でもパフォーマンスをやりたいと考えている学校関係者も訪れており、注目度は高いようだ。
「書道をする女子生徒には物静か、落ち着いている――そんなイメージがあると思いますが、それとは裏腹に力強いパフォーマンスが魅力でしょう。華奢な体なのに、太い筆で豪快に書きつける様にはお客さんも驚いています」
成海璃子さん主演による映画化も決定
日本テレビでも同様の書道大会「書道ガールズ甲子園」を実施している。2009年元日に放映されて以来、4回行われた。2010年元日は埼玉県の川口高校が3連覇を達成。番組を見た人はブログにこう書いている。「素晴らしく、まさに芸術だった」「『書』のレベルが高い」「一人で観ていたのですが、もう泣きっぱなしでした」
そして、今度は成海璃子さん主演による映画化も決定した。映画「書道ガールズ!!―わたしたちの甲子園―」は2010年1月18日~2月末、愛媛県四国中央市でロケが行われている。前出の愛媛県立三島高校が映画のモデルとなっており、同校の書道部員も登場。市は地域の活性に期待を寄せている。
書道パフォーマンス甲子園で審査委員長を務めた美術評論家で、書道ジャーナル主幹を務める小野寺啓治さんは、プロの世界では畳6畳とか8畳とか大きな作品があり、それを高校生もやるようになったとして、こう話す。
「パフォーマンスを楽しくやるのはいいことだと思います。でも、私は老婆心ながら、きちっとした文字、書の基礎はとりわけ大事にしてほしいと思っています。あんまりショー化しすぎるのも……という思いも実はあります。しかしながら、大きい筆を扱って文字を書き込むのは大変なんです。相当の練習が必要でしょう。それに、白い空間にバランスよく、それをいかに上手く配置するか――これには芸術性が問われます」