奈良県は2010年1月1日開幕した「平城遷都1300年祭」をテコに修学旅行生呼び込もうと必死だ。かつては修学旅行の人気目的地だったのに、最近は京都に大きく離されている。「平城遷都」関連イベントが起爆剤になることを関係者は期待しているのだ。
奈良市東京観光オフィスが、東京23区内にある学校388校を調査したところ、2010年度は171校、約2万人が修学旅行の際、奈良県内に宿泊予定であることがわかった。昨年度に比べて宿泊人数は、44.6%の増加だった。上原雅忠所長は、東京以外の学校でも増えると見ている。
修学旅行生の奈良宿泊、ピーク時の半分以下
奈良県内に宿泊する修学旅行生はピークだった20年前にはおよそ23万人だったが、4年前からは10万人を割り込んでいる。そこで、修学旅行客の奈良「宿泊」離れを食い止めようと、2006年に東京オフィスを設立することになった。
目的は、修学旅行客の奈良宿泊を呼びかけ、観光PRをすることだ。上原所長によると、関西方面に2泊3日する場合、昔は奈良1泊と京都1泊だったのが、最近は京都に2泊する傾向にある。かつては、観光名所をバスで回っていたのに対し、近頃は、生徒たちが公共の交通機関を利用してグループごとに各地を巡って見学するのが主になってきた。そのせいもあって、京都に連泊した方が便利なのだろう、と見る。
そこで、奈良県は修学旅行生を呼び込むため独自に、修学旅行用学習教材「奈良もの知り博士」を作成した。希望する学校に無料で配布している。観光名所などを紹介する内容で、クイズ形式(合計20問)のテキスト。解説を充実させており、ガイドにも役立つという。また、90%以上の正解者には奈良市長による認定証が授与される。
上原所長は「2009年8月にはじめましたが予想以上に好評。すでに全国から約50校、問い合わせがあった。修学旅行のピークは5~6月なので、さらに利用校は増える見通しです」と期待を寄せる。とりわけ2010年は、大型イベント「平城遷都1300年祭」と重なるだけに、奈良県のPRには力が入っている。
「せんとくん」ライセンス契約額も16億円超え
平城遷都1300年祭は2010年1月1日、開幕した。大晦日から元旦にかけては、奈良県内にある4つの会場――東の青龍会場(室生寺)、南の朱雀会場(金峯山寺)、西の白虎会場(信貴山朝護孫子寺)、北の玄武会場(奈良公園)で、カウントダウンや開幕宣言が行われた。会場にはあわせて2万1900人が足を運んだという。
一方、4月24日に公開される「平城宮跡メイン会場」は、完成に向け最後の工事に取り組んでいる。目玉となるのは、原寸大で復元される遣唐使船だ。平城遷都1300年記念事業協会事務局の担当者の話では、遣唐使船は3月中旬の完成に向け、現在は船底の骨組みが完成しつつある。2月には色塗りに入るといい、完成すれば、全長約30m、高さ15mに達する。甲板への乗船体験ができるので、見所の一つとなりそうだ。
平城遷都1300年祭では1500の関連イベントも実施され、1年間で1200~1300万人の観光客が見込まれる。関西社会経済研究所は2009年、近畿2府5県の経済波及効果を1564億円と試算。とりわけ地元の奈良県は988億円とされている。人気マスコットキャラクター「せんとくん」のライセンス契約額も16億円を超えた。本人は年明け後、PRに追われているようで、公式サイト内のスケジュールを見ると、週末はイベント出演で大忙しのようだ。