化粧品は不況に強いと言われてきたが、それは昔の話で、最近は数量、金額ともに減りつつある。とりわけ値段が比較的高い商品は苦戦中で、代わりにドラッグストアやスーパーマーケットで売っている2000円以下の化粧品が好調だ。メーカー側もこうした低価格帯の販売に力を入れ始めた。
化粧品にはドラッグストアやスーパーマーケット、量販店で売っているセルフ化粧品と、化粧品専門店や百貨店などで販売員が対面で売るカウンセリング化粧品がある。価格帯では2000円以下の低価格帯、2001~5000円の中価格帯、5001円以上の高価格帯に分けられる。ボリュームゾーンは低~中価格帯で、ほとんどがセルフ化粧品だ。
「アクアレーベル」、コンビニ2万3000店に導入
女性にとって欠かすことのできない化粧品は、景気の影響を受けにくいと言われていた。ところが、経済産業省が毎月発表している化粧品の出荷量は数量、金額ともに減少傾向にある。
資生堂は2009年11月の国内化粧品売上高が前年同月比9%減で、08年10月から14カ月連続して前年を下回った。お客が化粧品を買わなくなったのではなく、安いものにランクを下げたり、使用量を減らしたりして節約するようになっている、と広報担当者は見ている。
そこでドラッグストアやスーパーで売っていた低価格ブランド「アクアレーベル」を、09年夏から「ローソン」、「サークルKサンクス」などのコンビニ2万3000店に導入した。2010年3月までに取り扱い店舗を4万5000店に増やす方針だ。
また同社は、1000円以下の化粧品ブランド「ドルックス」が口コミサイト「アットコスメ」で広まり、幅広い女性に売れ出しているため、ドラッグストアなどで売り場づくりに力を入れている。資生堂が半世紀以上にわたり売っているロングセラー化粧品で、安いのに品質がいいというのが人気の理由だ。若い女性の間では、ドルックスを使っている人を「ドルラー」と呼ぶそうだ。
「安易に値段を下げることはしません」
カネボウ化粧品でもカウンセリング化粧品は苦戦しているが、低価格のセルフ化粧品は堅調で、売上シェアが微増して4割になった。
スーパーやドラッグストアで店頭支援業務を行う花王グループと組み、08年から売り場づくりに力を入れ始めたのも功を奏した。協力店を2010年3月までに4000店に増やす計画だ。
「ユニクロ」や「H&M」といった安い衣料品にお客を取られたスーパーマーケットや百貨店が次々と安いプライベートブランドを導入して、衣料品が値崩れしたように、化粧品もデフレの波に飲み込まれるのか。
これに対し、カネボウ化粧品の広報担当者は、
「化粧品会社以外の一般メーカーから1000円以下の安い化粧品が売り出され、確かに売れているようですが、それらと同じ価格帯に下げることは今のところ考えていません。当社の商品はやや高くなる分、化粧品を通じて長年提供してきた夢や楽しさ、わくわく感といった付加価値をつけていきます。そこは化粧品メーカーとしては一番譲れないところです」
と話している。
コーセーは09年4~9月の化粧品事業の売上高が前年同期比5.2%減だった。中価格帯が苦戦する一方で、コンビニ専用ブランド「雪肌粋」や09年3月に投入した「コスマジック」といった低価格帯品の売れ行きがいいという。それでも広報担当者は、
「このまま低価格帯市場が伸びていけば、既存の低価格ブランドのアイテムを増やすことは考えられますが、安易に値段を下げることはしません」
といい、各社とも値下げには慎重な構えだ。