業界再編がさらに加速する可能性
苦境打開のため、ベストは09年から、自社店舗を「ビック」の看板につけ替える取り組みを始めた。ビックのポイントシステムと知名度で集客力を強化するという「名を捨てて実を取る」(ベスト関係者)戦略だ。しかし、抜本的な改革には道遠く、ついに首都圏の事業拡大の足がかりと位置づけてきたさくらを手放し、大量の店舗閉鎖に踏み切ることになった。12日に会見した深沢・新社長は「(店舗を)広域展開することで、地域の店舗が後手に回った」と反省の弁を述べ、拡大路線の転換を強調した。
ただベストが直面する厳しい環境はベストだけの問題ではない。業界各社が進めてきた拡大戦略により、全国の家電量販店は供給過剰状態だ。大手10社だけでも全国に約3000店が乱立するとされる。ここ数年の激しい価格競争で各社の体力消耗も懸念される中、08年秋の金融危機をきっかけとして消費者の低価格志向は強まり、デフレ進行が追い打ちをかける。このまま拡大戦略を続けるには限界が来ているのは明らかだ。ベストの思い切った戦略転換を機に、業界各社の戦略が大きく変わり、業界再編がさらに加速する可能性が強いとみられている。