「ウェブページ印刷で収入減」 新聞協会が「公正な利用」に反対する理由

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   「ウェブページの無断印刷は被害甚大」。日本新聞協会など6団体は2010年1月20日、文化庁で法制化の議論が進められている著作権法上の「フェアユース規定」に反対する意見書を、審議会の小委員会に提出した。特に「ウェブページの印刷」を事例にあげ、「無断印刷されると、新聞社などの収入が著しく損なわれる」と断固反対の姿勢を見せている。

「新聞社・出版社は大きな影響を被る」

   フェアユースは、米国などで導入されている著作権法上の権利制限規定で、「公正な利用(fair use)であれば、著作者の許諾がなくても著作権侵害にならない」というルールだ。日本でもインターネットの普及などを背景に、利用者やネット企業などから導入を要望する声が高まっている。

   しかし、新聞や雑誌など現行の著作権法で保護されてきた業界は、フェアユース導入によって権利が制限されるため反対の姿勢だ。今回は、文化審議会著作権分科会の法制問題小委員会が1月20日に開かれたのにあわせて、日本新聞協会や日本雑誌協会などが連名で反対意見書を提出した。意見書は、フェアユース規定の問題点として、

「何が『フェア』であるかの明確な線引きがないと利用者は混乱するばかりでなく、あいまいな解釈を基に、本来は『フェア』でない複製が広まり、いたずらに権利者と利用者間の争いを増大させ、双方の時間的経済的負担を強いることになるだけであると考えます」

と述べ、日本版フェアユースといわれる「権利制限の一般規定」を著作権法に導入することに異を唱えている。そして、具体的なケースとして「ウェブページの印刷」を問題にした。

「ウェブページとして公開しているのは、広告媒体としての利用、あるいは出版物などの内容の紹介、あるいは読者にいち早く情報を提供するというPR効果を狙ったものであり、読者がこれを印刷して、その出版物などの購読の代替として利用することを想定したものではありません」

   このように新聞社や出版社のウェブベージの目的を記したうえで、

「これらのウェブページが権利制限によって私的使用の範囲を超えて許諾なく利用されることになってしまうと、広告媒体としての価値が失われ、あるいは印刷媒体を購入する必要はなくなり、新聞社・出版社は大きな影響を被ります」

と主張。現行法で認められた「私的使用」よりも広い範囲で無断利用できるようにすることに反対した。

「もっと慎重に議論する必要がある」

   さらに、企業が新聞記事などを複製利用する場合、現在は年間10億円以上の使用料を払っているとして、

「ウェブページが許諾なく無料で印刷されることになれば、企業は著作物の複製利用の契約や許諾申請をやめて、ウェブページの印刷に流れると予想され、現在、許諾システムで得られている権利者の収入は、著しく損なわれることになります」

と主張している。

   ビジネスの現場では、仕事に役立つ情報をネットで探し、必要に応じて印刷するということがごく当たり前に行われている。しかし現行の著作権法では、このような行為は違法とされる可能性が高い。文化庁著作権課の職員も「完全にクロとは言い切れませんが、シロとも言えませんね」と言う。

   だからこそ経済や文化の発展のために、フェアユースを導入して堂々とウェブページを印刷できるようにすべきだとも思えるが、新聞や雑誌からすれば、自らの利益を侵害する行為と映ってしまうようだ。新聞協会の担当者は、

「何が『フェア』であるかの議論が尽くされないまま『フェアユース規定』が導入されてしまうと、企業内でウェブページをコピーして勝手に配るようなことが広がる恐れがあります。現状ではまだ拙速すぎるので、もっと慎重に議論する必要があるということです」

と説明している。

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