スーパーでは通常1袋30円台で売られ、特売時にはタダ同然で投げ売り。節約には欠かせない「もやし」が値上がりするかもしれない。原料となる「緑豆」の輸入価格が高騰しているからだ。
緑豆は9割が中国からの輸入で、2009年秋に収穫された緑豆は08年産より約6~7割も上昇している。主産地の中国吉林省や内蒙古自治区などが干ばつに見舞われ、生育期となる夏場の雨量が極端に少なくなり、収穫が大きく落ち込んだ。07年も不作だったが09年はそれを上回る不作だといい、輸入価格が過去最高値を記録している。
「企業努力は限界を超え、健全な経営が難しい」
中国ではここ数年、トウモロコシなど高収入の作物に転作が進み、緑豆の作付面積が減少傾向にある。中国国内で、もやし工場が稼働し始めて国内需要が増えているほか、インドでも需要が伸びている。緑豆の価格高騰の要因はこんなところにもある。
一方、もやしはスーパーマーケットで「目玉商品」として投げ売りされることも多く、不況下で主婦の強い味方だ。
生産者団体、全日本豆萌工業組合連合会は、
「デフレがモヤシの低価格化に拍車をかけて、納入原価を割り込んでまで安く売られる傾向が強くなっています。モヤシ生産業者は経費削減の企業努力は限界を超え、健全な経営が難しい状況です」
と訴え、流通各社と業界団体に対し文書を送っている。
大手もやしメーカーの担当者も、
「緑豆の値段が上がっているのは、収穫量が少なかったという単純な理由ではないので、2010年以降に極端に下がるとは思えません。販売価格を据え置いても1年は企業努力で我慢できますが、それ以降は間違いなく厳しくなります」
といい、流通各社に価格の是正を求めている。
中小規模の生産者は廃業するしかない?
もやしは原価構成比率の中で原料が占める割合が低く、200gあたり30円台で売られても利益が出ていたが、緑豆が08年より6割も値上がりした今、赤字になるのが目に見えている。
とはいえ、安さが売りのもやしを値上げしたら、売れなくなるという心配もある。
前出の大手メーカーの担当者は、
「値上げしたいのはやまやまですが、いろんな商品が下がっているなか、もやしだけが値上げされれば消費者が『割高感』を持ってしまい、売れなくなります」
と不安を隠せない。
イトーヨーカ堂では200gあたり39円で売っている。値上げの予定について聞くと広報担当者は、
「当社の企業努力により、現状価格を維持していきます」
と答えた。
体力のある大手はまだしも中小の生産者は廃業するしかない、とも業界ではささやかれている。