新党結成に向けて動いている平沼赳夫元経産相が蓮舫参院議員のことを「元々日本人じゃない」と批判した。ネットでは「帰化した人に対して失礼すぎる」といった非難の声があがっているが、平沼事務所は「撤回するような発言はしていない」と強気の姿勢を崩していない。
「帰化した者に対して失礼すぎる」
毎日新聞や共同通信の報道によると、平沼氏は2010年1月17日、地元の岡山市内で開いた後援会パーティーのあいさつで政府の事業仕分けを批判し、仕分け人を務めた蓮舫議員について「言いたくないが、元々日本人じゃない。帰化して国会議員になって、事業仕分けでそんなことを言っている」などと発言した。
公式サイトによれば、蓮舫議員は1967年、台湾人の父と日本人の母の間に生まれた。当時は父親が日本人の場合しか日本国籍が取得できなかったが、改正国籍法の施行後の85年、高校生のときに日本国籍を取得した。つまり帰化したことは事実だが、出自を問題にしたことに対して、ネットでは批判の声が多数あがった。ミニブログサービス「ツイッター(Twitter)」には、
「帰化した者に対して失礼すぎる」
「まだ、このような人権感覚の政治家がいることが、ホント情けない」
「こういう発言をする資質のひとを国会議員にしておくのはやめにしたい」
といった批判コメントが次々と投稿された。なかには平沼氏を支持する声もあるが、少数派だ。小沢氏の元秘書が逮捕されたときには、沈黙してしまっていると蓮舫議員を批判していた松原聡・東洋大学教授も、
「平沼『蓮舫、帰化』発言。ヒドイ。平沼氏が経産大臣のころ、TV番組で知り合い、政策通だなと評価していた。経産官僚にも評判がよかったのに。郵政あたりからおかしくなり、ありえない『郵貯がハゲタカファンド買収される』と叫びはじめていた。今回の発言も、同じ根っこなのか・・・」
と平沼氏の姿勢を強く批判している。
「撤回するような発言はしていない」
海外、特に欧米社会では、人種や民族への差別的発言が政治家の命取りになる。人気ブログ「金融日記」の主宰者で、米系投資銀行に勤務する藤沢数希さんは、
「日本と国際社会の違いのひとつに差別発言への寛容さがある。国際社会のビジネスとか大学とかで人種、国籍、性別などにもとづく差別発言をするとむちゃくちゃシリアスな問題になる。こんなこと言ったらふつう一発アウト」
と痛烈な非難を浴びせた。
平沼氏は永住外国人への地方参政権付与に反対の立場で、2009年10月には公式サイトで「永住外国人が参政権を得るためには、法律どおり日本に帰化することが妥当だ」と主張している。だが、フリージャーナーリストの岩上安身さんはツイッター上で
「帰化をした者に、こうした差別を行うなら、『参政権ではなく帰化を』という主張そのものが、説得力を失ってしまう。平沼氏は謝罪して、発言を撤回すべきだ」
と提言した。平沼氏の謝罪や発言撤回はあるのか。議員事務所に取材すると、秘書の一人は、
「私も聞いていたが、民主党を批判していただけで、何ら問題があるとは思わなかった。撤回するような発言はしていない」
と話していた。一方、蓮舫議員の事務所は
「直接発言を聞いたわけではないので、コメントする立場にない」
としている。