谷歌(グーグル)が中国から撤退するという説が有力だ。日本や米国では「中国政府の検閲に耐えられなくなったから」と見ているが、中国ではそれだけではないと考えている。グーグルを取り巻く環境は厳しい。シェアでは、中国語最大の検索エンジンである百度(Baidu)に圧倒され、回復の兆しはみえない。加えて、度重なるエロ情報や詐欺広告の流布、中国作家との訴訟トラブルなど不祥事続き。こうしたことが撤退を選ばせたのでは、というのだ。
2010年1月12日朝7時過ぎの中国。百度を使おうと思ってアクセスしてみると、まったく表示がない。結局、多くの中国インターネットの利用者(網民)は、百度を4時間も使えなかった。同じころ、グーグルで検索してみると、まず出てきたのが「百度はパンク」というニュースだった。あっという間にページビュー(PV)は200万を上回った。
撤退ほのめかす声明と同時に、罵倒する書き込みが溢れる
百度の社員は、電話やMSNのチャットを使って広告主などへの報告に追われた。「午前中だけでも、80か90以上の電話をかけたり、かかったりした」と同社社員は打ち明ける。修復までの4時間の間に、多くの広告主は百度にクレームをつけた。
「4時間で会社は数十万元の損失をしたではないか」
「来年の契約は10%安くしてもらいたい」
「会社のホームページのランキングをもっと前に入れてもらいたい」
などといい、パンクの影響の補償を百度に求めた。
同日12時、グーグルで「百度パンク」を検索してみると、この時点で12億の結果が出る。中国国内の映画市場で爆発的な人気を呼んだアメリカ映画の「アバター」を遥かに超えた。
百度のサイトはパンクしただけでなく、トロイの木馬というウイルスも埋められていたので、ウイルスに感染するユーザーも出た。
百度の李彦宏総裁が掲示板に書き込んだ「史上に前例はない、ないのよ」は、中国でもっとも流行の言葉となった。
百度のパンクという熱い話題がまだ議論されている中、唯一の競争相手であるグーグルは、1月13日早朝、撤退をほのめかす「中国を新たにアプローチする」という声明を発表した。すると、グーグルを罵倒する書き込みがネットに溢れた。
検索エンジンシェアはグーグル12.7%に対し、百度は77.0%
3.84億のインターネット人口、まだ28.9%の普及率、一年間携帯からインターネットをアクセスする人が1.2億も増加した中国で、グーグルは「政府の検閲」を理由に撤退する可能性を示唆した。その声明とともに、中国政府がもっとも嫌がる天安門事件の写真などを大量に公開し、もう二度と中国には進出しない姿勢を示した。
日本の新聞などが書いている、「検閲に耐えられない」という理由もあるだろうが、中国ではまったく違う見解もたくさん出ている。
グーグルはこのところトラブルや不祥事続きだ。2009年6月18日、インターネットをつかってエロ・コンテンツを流し、一時Google.comとGmailは使えなくなった。また、同年9月、グーグル(中国)の李開復総裁は突然辞任した。「李総裁の業績に対して、グーグル本社は大変不満に思っていたようで、実は首切だった」と中国のインターネット企業の社長はJ-CASTに明かす。
その後、中央テレビ局であるCCTVの番組が、「グーグルは大量の詐欺広告を掲載しており、しかもエロ写真や下品なニュースも多い」と暴露した。さらに、グーグルは中国作家の許可を得ないで8万冊以上の作品をデジタル・ライブラリーに公開したという理由で、中国作家協会に告訴された。10年1月にはテレビを通じて中国作家に「申し訳ない」(sorry)といい、謝罪を思わせるような談話を発表したのだ。
一方、中国インターネット情報センターが2009年9月21日に公表した「2009年 中国検索エンジンについての研究報告書」では、中国検索エンジン市場でのグーグルのシェアは12.7%にとどまった。ライバル百度は77.0%を記録し、ダントツのトップ。2000年から正式に中国に進出し、ほぼ10間頑張ったグーグルは、結局中国であまり受け入れられず、撤退を決定する直前まで来ていた、というのが中国の見方だ。
(J-CAST北京)