水の「おいしさ」や「安全性」が注目される中、ミネラルウオーターの「宅配」ビジネスが好調で、市場規模は拡大の一途をたどっている。その「けん引役」となったのが「LPガス」業者だという。うまくいったその「ヒケツ」はどこにあるのか?
「宅配水」とは、12リットルの大きなボトルに充てんしたミネラルウオーターを、家庭や事業所へ定期的に配送するサービスだ。調査会社の富士経済によると、宅配水の市場規模は2008年が458億円で、09年(見込値)が549億円。実に20%近い成長で、同じ宅配事業だと有機野菜の宅配(09年:448億円)をしのぐ数字になっている。
本業の需要落ちる「春・夏」を有効活用
そうした宅配水市場の急成長を支えているのは、意外にも「LPガス」の業者だった。全国約25%と第1位(08年時点)のシェアを持つ「アクアクララ」は、LPガス小売・卸売の「レモンガス」(神奈川)が親会社だ。他にもTOKAI(静岡)が「朝霧のしずく」、岩谷産業(大阪)が「富士の湧水」と、各地でLPガス業者が「宅配水」ブランドを展開しており、各社が展開する「宅配水」の価格は12リットルで1200円から1600円程度となっている。
LPガス業者が宅配水事業に乗り出した裏には次のような背景があった。
まず、メリットとしては、経営資源をそのまま宅配水事業に利用できること。LPガスボンベの配送網を利用し、顧客に対して自然に「水」もすすめられるのだから新規開拓の手間がかからない。
さらに季節要因もある。LPガスの繁忙期は秋冬で、気温の上がる春夏は需要が落ちがち。逆にこの時期に、温暖期の需要が盛んな飲料水を扱えば、1年間を通じて経営資源を有効に活用できるのだ。