和歌山電鉄貴志川線・貴志駅のネコ駅長「たま」の人気が健在だ。年明けには課長相当職から執行役員に「昇進」した。駅長就任後3年のスピード出世は、業績への貢献がめざましいというのがその理由だ。
南海電気鉄道の業務を引き継ぐ形で、和歌山電鐵が設立されたのは2006年4月1日。ネコ駅長「たま」は当時、駅の売店で飼われていた一介の三毛猫に過ぎなかった。
駅長就任後、30万人の利用客を「招く」
小嶋光信社長は開業記念式典を終えた日、偶然、「たま」と出会う。売店と倉庫に挟まれた小屋に住んでいたが、撤去を命じられ、行き場所がなくなっていた。そのままにはできないと、社長は駅長に任命することを思いついた。近隣で愛されていたこともあるし、貴志駅がコスト削減で無人駅となっていて淋しかったこともあった。
駅長には2007年1月に正式に就任した。この様子は6台のテレビカメラに囲まれて、報じられた。猫がどんな業務をできるかと問われると、小嶋社長は「客招き」と答えた。横にいた「たま」がきちんと、右手を上げたのも評判に。鉄道ファンやネコ好きに話が伝わり、貴志川線の利用客は増えた。約190万人だった利用客は1年で、220万人に増えた。もっとも、貴志川線はいちご電車やおもちゃ電車、たま電車といった内外装に工夫を凝らしたユニークな電車も注目を集めている。
今では海外、とりわけアジア各国からも「たま」を見ようと訪ねに来る人がいるといい、フランスでは「働く猫」としてドキュメンタリー映画にも出演したそうだ。こうしたことを計算に入れ、関西大学の宮本勝浩教授は2008年、「たま」による1年間の経済効果は11億円と試算した。関連グッズが売上を伸ばし、写真集も評判を呼んだ。