イマドキの女性は「ラーメン」や「牛丼」といった男性客が多い店でも、平気で1人で食べに行く。3人に1人が「ひとりラーメン」を経験し、「焼き肉屋」や「ラブホテル」「住宅展示場」に行くという人もいる。
大手ソーシャルネットワーキングサービス「ミクシィ(mixi)」には「おひとりさま」のコミュニティがあり、5000人以上が参加している。最近の書き込みを見ると「ひとりラーメン」「ひとり映画」「ひとりカラオケ」は定番で、1人でボーリングしたとか、屋台のおでんを食べた、寿司屋に行ったという人もいる。「ひとり動物園」「ひとりプロレス観戦」なんてものもあり、行動範囲が広がっているのが伺える。
女性9割が「ひとりで出掛けるのが好き」
タレントの眞鍋かをりさんも1人で行動する「おひとりさま」で、「ひとり焼肉」も経験済みだ。ランチならまだ敷居が低いが、眞鍋さんはディナータイムにナマ中、タン、サラダ、ホルモンチゲを注文した、と2009年4月30日のブログで告白している。
「おひとりさま」は珍しくないようだ。化粧品や雑貨などを製造販売するエルシーラブコスメティック(東京都中央区)が20~60歳代の女性675人に09年11月13~30日に行ったアンケートによると、89.7%が「ひとりで出掛けるのが好き」と回答。時間に制限がない、自分の意思だけで行動ができる、気楽だからという理由だ。
1人で行ったことがある場所はカフェが84.1%とダントツで多く、映画館(56.7%)、コンサート、観劇(48.1%)、旅行(38.1%)と続く。「ラーメン屋」(33.2%)は3人に1人が経験している。「牛丼屋」という回答も同じくらいあり、いずれも滞在時間が短いので、店員や男性客の視線があまり気にならないようだ。眞鍋さんのように「ひとり焼肉」と答えた女性は2.5%だった。
少数派では、可愛い部屋とお風呂が好きという理由で「ラブホテル」や、「住宅展示場」「男性の下着売り場」「夜の神社」という人もいた。
20歳代のおひとりさまは自然体
「おひとりさま」を広めたのはジャーナリストの故岩下久美子さんで、著書『おひとりさま』(中央公論新社)で「個が確立できた大人の女性」と定義した。岩下さんが01年に事故で亡くなった後も受け継がれ、05年「ユーキャン新語・流行語大賞」に「おひとりさま」がノミネートされた。
『男が知らない「おひとりさま」マーケット』(日本経済新聞社)の著者でマーケティング・ライターとして活躍する牛窪恵さんは、当時は自立したカッコイイ女性というイメージがあり、30~40歳代のキャリア女性の間でブームになったと振り返る。しかし、おひとりさまを貫くのは今のように簡単ではなく、
「女性が1人で旅館に泊まろうとすると『自殺するんじゃないか』と思われて、断られることがよくありました。断られた後で同じ旅館に知り合いがグループで予約したら、普通に取れましたから」
といっている。
女性誌などで特集が組まれるようになると、女性1人で泊まれる宿泊プランができて、レストランでもカウンター席をつくったり店内がわかるようガラス張りにしたりと変わっていった。環境の変化がおひとりさまの増加につながったと見ている。
また近頃は20歳代のおひとりさまが増えている。子どもの頃から1人部屋を与えられ、1人のほうが気楽だからだ。アラフォー世代とはタイプが違って、肩肘を張らず自然体で1人の時間を楽しんでいる、と牛窪さんは話していた。