新たな成長戦略きちんと示せるか
加えて、三井住友の株価はこの間やや戻したとはいえ、2010年1月13日終値で2808円にとどまる。前回増資時の09年6月の株価は、一時4520円(年初来最高値)をつけるなど高値水準で、公募価格は3928円だった。いまの株価はそれに遠く及ばない。前回の水準を下回ったままの増資には、「市場の最低限の『掟』さえ破るもの」(民間研究所エコノミスト)との声が出ている。
問題だらけの増資だが、やる以上は新たな成長戦略を示す必要がある。前回の増資は日興コーディアル証券買収という明確な目的があった。今回は、「収益力の強化」を掲げ、利益を増やして株主に報いる方針を示している。
具体的には①利ざやの低い融資などの資産を売却し、13年3月までに約5000億円を捻出するほか、取引先の持ち合い株を数千億円削減するなどして財務体質を改善する、②余力でアジア戦略や投資銀行部門を強化する――などの方針を示す。ただ、海外戦略の具体策は「今後の検討課題」(幹部)。
いずれにせよ、市場の厳しい声を押しての増資だけに、既存株主の理解を得るには収益力強化の実効性が問われる。