岐阜県高山市に外国人観光客が続々と訪れている。日本人観光客の好みとはちょっと違い、古い町並みやお寺、お墓といった、何気ない「古い日本」が人気だ。
2008年に市を訪れた観光客は426万1000人で、このうち外国人は17万1200人と年々増えている。外国人が1人でも歩ける町を目指し、市のホームページは英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語などで書かれ、散策マップも9言語に対応している。
寺だけでなく、お墓にも興味がある
高山市は1985年から外国人観光客を積極的に誘致している。なかでも力を入れている台湾はここ10年で急激に増えた。最近はヨーロッパ、オーストラリア、アメリカからもたくさん押し寄せてくる。
日本人には飛騨高山の白川郷・合掌造り集落や奥飛騨温泉郷が有名だが、外国人に人気なのは市街地に残る古い町並みだ。江戸時代から商人の町として栄え、いまも当時の建物で商いを続けている。軒下には用水が流れ、造り酒屋には杉の葉を玉にした看板「酒ばやし」が下がっていて、外国人が思い描く日本のイメージにぴったりのようだ。
そこから10分ほど歩いたところには十数軒のお寺が密集する東山寺町がある。4キロメートルにわたる遊歩道があり、特に欧米人に人気のスポットだ。また欧米人は寺だけでなく、お墓にも興味があるという。
高山市観光課の担当者は、
「お墓を観光スポットにしているわけではありませんが、お寺散策のついでに見ていくようです。欧米のお墓とは違っているので珍しいのではないでしょうか」
と話している。
古い町並みもお寺も狭い地域に集まっていて、すべて歩いて回れるところも他の地域にはない魅力のようだ。
熊野古道を2日間かけて歩く
和歌山県田辺市には世界文化遺産に登録された熊野古道や熊野本宮大社、熊野本宮温泉郷があり、ヨーロッパやアメリカを中心とする観光客が多く訪れる。2008年の外国人観光客は6285人だった。
市内5つの観光協会が加盟する田辺市熊野ツーリズムビューローの事務局によると、欧米人に人気なのが熊野古道だ。日本人は短い距離を1、2時間程度しか歩かないところ、欧米人は3、4日間かけて本格的に散策する人が多い。人気があるのは中辺路ルートの瀧尻王子から熊野本宮大社までで、2日間はかかるそうだ。
なんでもない田舎を観光地にしようという試みも進んでいる。農林水産省と観光庁は連携し、農村に観光客を呼び込む「ようこそ!農村プロジェクト」を09年9月に立ち上げた。新しい施設をつくるのではなくて地元の財産を活かすのが狙い。地元の食材を食べて、田舎暮らしを味わってもらい、訪日外国人を増やしたい、と観光庁観光地域振興課の担当者は話している。