紙袋で現金4億円を渡された――。元秘書がこう証言したと新聞各紙が報じている。それにしても、民主党・小沢一郎幹事長の金満ぶりは尋常ではない。なぜそれほどお金が集まるのか。そのカラクリは、「政治改革」から生まれた、という見方も浮上している。
陸山会の土地購入に4億円もの資金が動いた問題で、小沢一郎氏の過去の「錬金術」にもスポットライトが当たり始めた。
新生・自由両党の政党交付金などを流用?
毎日新聞が2009年12月27日に報じたところでは、小沢氏は、過去に率いた新生党と自由党が解党したときの残金計22億円余を、自らの政治団体に移していたというのだ。新生党の残金9億円余は「改革フォーラム21」に、自由党の残金13億円余は「改革国民会議」にそれぞれ移された。自由党の残金については、読売新聞も同日付企画記事で、同様のことを指摘している。
そして、その残金のかなりの部分は、政党交付金などの税金というのだ。
新生党の9億円のうち5億円余が立法事務費で、自由党の13億円のうち5億円余は政党交付金だった。
さらに、しんぶん赤旗は2010年1月1日、小沢氏が関係する政治団体が08年に計20億円余もの繰越金を持っていたことを明らかにした。うち、改革フォーラム21と改革国民会議がそれぞれ7億円、10億円ほどと多くを占める。新生・自由両党の党資金が、小沢氏の資金形成に役立っている形だ。
政党交付金は、新生党などの細川連立政権が1994年に成立させた政治改革4法で実現した。その代わりに、腐敗を生みやすい政治家への企業献金が2000年に禁止されている。
ところが、小沢氏は、西松建設の違法献金事件が発覚してから、今回また4億円の原資に疑惑が持ち上がるなど、ゼネコンなどとの関係が噂されている。もし一連の報道が事実だとすれば、政党交付金などに頼りながら、同時に企業の献金も受けるという税金と献金の「2重取り」をしていた、といわれてもおかしくないやり口だ。
子分に分配、田中政治の再来?
小沢一郎氏は、集めた政治資金で、子分となる政治家のために使っていたようだ。
改革国民会議は、小沢氏による若手政治家の育成事業「小沢一郎政治塾」を運営し、毎日新聞によると、会場費や講師謝礼などに最近の5年間で2000万円強を支出していた。また、読売新聞によると、自由党解党時の党資金1億7500万円は、所属する国会議員の35政治団体に500万円ずつ寄付されていた。
西松事件の公判では、検察側が「改革国民会議も小沢議員の財布の一つに過ぎなかった」と述べている。
こうした金の力をバックに、小沢氏は、2009年12月に、小沢チルドレンら143人を連れて訪中したり、2010年元日には、さらに166人を集めて自宅で新年会を催したりしていた。
ある政治ジャーナリストは、小沢氏のやり方が田中角栄元首相にそっくりだと指摘する。田中元首相も金の力をバックに、東京・目白の自宅に大勢の議員らを集めたりするなどしていたからだ。
「なにしろ田中角栄の一番弟子ですから。その政治手法を教えとして、政治家をやってきたわけです。政党交付金ももらうし、献金も集める、すご腕なんでしょう。昔流に言えば、金権・派閥政治なんですね。系列の政治家を育てるのには金がかかるので、そのへんが『数は力なり』の田中型なんですよ」