渋滞を避けて目的地まで早く到着するルートを教える機能がお目見えするなど、カーナビが「進化」している。その最新型が「プローブナビ」と呼ばれる通信カーナビで、渋滞を回避するために、より広範なエリアから多くの道路を検索でき、しかも目的地までの所要時間の短い道路を選べるようになった。
パイオニアの「カロッツェリア スマートループ」、トヨタの「G-BOOK」やホンダの「インターナビプレミアムクラブ」、日産の「カーウイングス・プローブ」などのカーナビがそれ。「渋滞を回避し、スムーズな運転によって目的地に早く到着すれば、燃費の向上も見込める」とパイオニアはいう。
「普通のカーナビ」では渋滞回避できない
2010年も、お正月を故郷ですごした人が東京に戻る東名高速道路や中央高速道路で50キロ超の数珠つなぎの渋滞が発生し、ドライバーの手元のカーナビが真っ赤になった。NEXCO中日本によると、09年の年末年始に8回だった30キロ超の渋滞が今年は14回もあった。
09年はETC割引の導入で渋滞が増え、道路事情が一変した年だった。カーナビの売れ行きはETC機器の搭載と相まって好調だったが、じつはいわゆる「普通のカーナビ」では、渋滞を回避する迂回ルートを教えてくれないことはあまり知られていない。
現在の多くのカーナビは、日本道路交通情報センターの渋滞情報受信システム(VICS)を搭載していて、ドライバーはカーナビ上でVICSから受信した渋滞情報を見ていることになる。
たとえば、カーナビの情報にそって渋滞道路を回避したつもりなのに、迂回した道も混雑していたという経験を持つ人は少なくないはずだ。それは普通のカーナビが受信するVICS情報が主要な幹線道路しかカバーしていないために起こる。
従来の10倍の道路情報をもつ「プローブナビ」
一方、「プローブナビ」が対応できる道路情報は、VICSの約7万キロメートルをはるかに上回る、最大約70万キロメートル(パイオニア製)。クルマが双方向で通れる道路をほぼ網羅していて、本当の「裏道」がわかるほど差があるのだ。
通信機能によって全国の「プローブナビ」を搭載するユーザーから提供された走行情報やサービスエリアなどの施設の情報を、サーバー(基地局)を介してお互いに交換し合い、ユーザー同士で共有することで最新の道路情報が得られる仕組みで、カーナビがどの道路を通過するのに何分かかったかをリアルタイムで把握して、その情報をもとにすいている道路を選べるため、迂回した道路が混んでいることもなく、目的地まで最も早く到達できるというわけだ。
「渋滞」を研究する東京大学大学院の西成活裕准教授は、「渋滞を回避するには、渋滞している時間と場所を正しく把握して、いかにクルマを分散して走らせるかがカギ。その点で、プローブナビは渋滞情報をリアルタイムに、正確に提供してくれる」と語る。
プローブナビを搭載したクルマが増えるほど提供される情報量も増えることから、日産とホンダ、パイオニアの3社は09年10月から、それぞれが得た情報の相互活用を開始。より多くの、精緻な道路情報を得られるようにした。
2010年も高速道路の一部無料化などによって、また大きく道路事情が変わりそうなので、渋滞時には威力を発揮しそうだ。