鹿児島県阿久根市の竹原信一市長が、防災行政無線を使って、「意図的に誤解を誘導するキャンペーン」などとするマスコミ批判を行った。電波法違反(目的外使用)に当たるのではという指摘も出たが、総務省九州総合通信局は「法的に問題はない」と判断。市も「定時放送の一貫だった」と説明している。
報じられている内容をまとめると、竹原市長は2010年1月4日、市の総務課にテープを渡し、市内約8600戸に向けた防災行政無線で放送を指示。翌5日19時半過ぎに市のほぼ全域で、その後、同じ内容が6日6時5分と同6時50分に、地区別で放送された。
「新聞記事には悪意を感じている」
放送は約4分20秒。新年の挨拶のスタイルをとり「明けましておめでとうございます」で始まった。
竹原市長は09年11月、ブログに「高度医療のおかげで以前は自然に淘汰された機能障害を持ったのを生き残らせている」と、障害者差別ともとれる文章を掲載。これが新聞などで大きく報じられ、問題化した。これについては、
「ブログ記載から1か月近く遅れて騒動が始まった。新聞社が文章の言葉尻だけをとらえて意図的に誤解を誘導するキャンペーンを行った」
とマスコミを批判。「新聞記事と日教組などの組織行動には悪意を感じている」とも述べたという。
総務省九州総合通信局「法的に問題ない」
電波法では、防災行政無線は、災害時の連絡や行政広報の伝達手段として使用できるとされており、市の規則でも「通信は防災、行政事務及び広報以外の用に使用してはならない」と定められている。
今回の竹原市長の放送は、「目的外使用」としてこの電波法に違反する可能性がある。総務省の九州総合通信局も市の総務課に問い合わせたというが、同局の担当者は、
「防災行政無線は、防災用と行政用に使えます。放送内容を文面で見たところ、市の広報活動と判断しました」
と話し、「法的な問題はない」という認識を示している。
また、阿久根市では普段から防災行政無線を使っており、一日3回時報が流されるほか、週3~4日の頻度で6時5分と6時50分、19時35分の定時に市の広報放送が流されている。市サイトではこれまでの放送内容が見られ、「学校給食用物資納入希望者の公募」「消防出初式の開催」といった幅広い分野で活用していたようだ。市の担当職員によると、市長が防災行政無線を使って新年の挨拶をするのは「おそらく初めて」だが、あくまでも「普段の定時放送の一貫だった」としている。