2010年5月に任期満了となる日本経団連の御手洗富士夫会長(74)の後任選びが混沌としている。早ければ1月12日の正副会長会議で内定するが、もつれれば2月8日の次回会議に持ち越されるとの観測も出ている。
「ポスト御手洗」の最有力候補とされてきたのが中村邦夫・パナソニック会長(70)。松下電器産業の社長に就任して「破壊と創造」をスローガンに、聖域無き構造改革に取り組んで業績をV字回復させた実績は申し分ない。ただ、09年春以降、重要な会議や催しの欠席が目立ち、健康不安説が取りざたされ、後継レースから大きく後退した。
財界3団体のトップを同一会社が占めることありえない?
代わって浮上したのが西田厚聡・東芝会長(65)。若いこともあって、行事は「皆勤賞」に近い精勤ぶり。選択と集中に取り組んだ経営手腕は評価が高く、東芝としても「打診を受ければ社を挙げてバックアップする」(東芝幹部)考えだ。ただ、同じ東芝の先輩である岡村正相談役(71)が日本商工会議所会頭を務めており、「同一の会社が財界3団体のトップを占めることはありえない」(経団連幹部)というのが常識。10年10月に日商会頭1期目の任期が来ることもにらんで、微妙な判断が必要になる可能性もある。
会長は副会長の中から選ぶ慣例があり、中村、西田両氏でないとすると、佐々木幹夫・三菱商事会長(72)、渡辺捷昭・トヨタ自動車副会長(67)らの名前も挙がる。ただし、「財閥色が薄い」ことも経団連会長の重要な要件とされることから、佐々木氏は困難というのが一般的な声。渡辺氏も、トヨタの業績が厳しいだけに「社業優先」で固辞する構え。
三村明夫・新日本製鉄会長浮上の可能性
こうして本命不在のまま推移する中、根強い待望論があるのが三村明夫・新日本製鉄会長(69)だ。09年春に経団連副会長を退任して、「副会長から」の慣例からは外れるが、新日鉄という企業としても、また三村氏個人としても、安定感は定評があり、一気に「ポスト御手洗」最有力候補に浮上する可能性もある。
次期会長は厳しいデフレ不況の下、民主党政権との関係をいかに構築するか、また温室効果ガス削減をはじめとする環境問題などの課題にいかに対応していくか、その指導力が求められるだけに、決定まで、目が離せない。