ダム中止の公約は「選挙目当て」だ
――八ッ場ダムは時間だけでなく、お金もたくさんかかっている。最初は2100億円の予算と言われていたのが、今では4600億円と倍以上に膨らんでいます。
脇 まず、最初に基本計画を作るときに「できるだけ小さい予算でできたら」ということを考えるので、どうしても小さめの見積もりになる。それから、現実に構造物を作っていくと、思ったよりも安くて済んだというのは少ない。調査すればするほど悪いところが見えてきて、「より安全に」ということで予算が何割か増えるというのもある。
もっと大きな要素としては、地元対策がある。ダムは地元の人に最大の迷惑を与えるわけだから、最大限面倒をみてあげたい。そうなると地元からは「集落のための施設を作ってほしい」とか様々な要望がでてきて、できるだけかなえてあげようということになる。作る側としては要望されるとダメとは言いにくいので、どんどん受け入れてしまうという部分もある。当初の予算が減ることはなく、まず間違いなく増えていくというのが現実だ。
――八ッ場ダムの予算は今後さらに増える可能性がある?
脇 八ッ場の場合は、補償もほとんど終わっていて、あとはダム本体の工事をやり始めるところまできているから、大きく変わる余地は少ない。
――脇さんは「民主党は根拠もなく中止を決めた」と批判しています。
脇 八ッ場ダムは途中で中止を打ち出し、業者や住民に被害を与えている。だが、どんな根拠で中止し、結果として被害を与えているのかと前原さんに質問しても、まともな答えが返ってこない。政党として中止という結論を出したのなら何らかの報告書があるのではないかと、資料の提出を求めても出してこない。
なぜ八ッ場ダムをやめたほうがいいのか、具体的な理由を聞いても返ってこない。政府がこんな不誠実でいいのかと思うよ。はっきり言って、民主党のマニフェストは「選挙目当てでいいんじゃないか」ということを言っているにすぎないのであって、根拠なんてないのだ。
脇 雅史プロフィール
1945年東京都杉並区生まれ。都立西高校、東京大学工学部土木工学科卒業。1967年建設省入省。主に河川畑を歩み、近畿地方建設局長をもって退官。1998年第18回参議院選挙比例区から当選。参議院議員として2期目を務める。