200年先を見越すと八ッ場ダムは是非必要だ
インタビュー・ダム建設は止めるべきか(中)

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ダム作るのは「天下り」のためではない

――だが、前原国交相は「できるだけダムに頼らない治水」を打ち出している。

   川を広げたり掘ったりするのは限界があるから、ダムに頼らないとしたら、堤防を高くするしかない。だが川に沿って鉄道があったり橋がかかっていたりするから、何百キロもある川で堤防を上げるのは大変なことだ。しかも堤防というのはいつ壊れるかわからず、必ずしも安心できるものではない。
   実際にはそんなに何度も大水がくるわけではないから、堤防の安全度を頻繁に確かめることができない。しかも何十年も前に作った堤防に継ぎ足しを繰り返しているから、なかなか信頼できないという問題もある。結局、計画論のいかんにかかわらず、川にくるピークの流量はできるだけダムでカットしたほうがいいという考え方になるわけだ。

――堤防の強度をあげていけばいいのではないか、とも言えそうですが。

   「堤防を強化すればいい」と簡単に言うのは机上の論理で、長年現場で水害につきあってきた技術者からすれば、とんでもない話だ。堤防というのは「長い糸」と同じで、何百キロある全線の1箇所でも切れたら大変なことになる。河川の被害を最小限にするという意味では、ダムのほうが確実だ。もちろんダムを作ればいろいろな影響があるから、全部がいいことばかりではない。しかしダムそのものが治水に効かないという議論はないはずだ。

――八ッ場ダムは渇水対策、すなわち利水目的もあるとされているが、「水需要が減っているので必要ない」という主張もあります。

   水需要が減っているのは事実だが、水道事業者はいまも水が足りなくなる恐れがあると言っている。10年に1回ぐらい水が少なくなるときを見込んで、計画を作っているからだ。私も実際に利根川を管理する立場にいたことがあるが、夏場は毎日ひやひやの状態が続く。現実に水道を管理していない人だから、そんな悠長なことが言えるのではないか。
   日本は弘法大師の昔から水で苦労してきた。それが今はダムが相当程度できて、見かけ上は洪水にしろ渇水にしろ、河川対策がそれなりの水準まできたから、「ダム不要論」が出てきた。これまで河川技術者が努力してきたことが現実に役立っているという証明ともいえるが、悲しいことにその意味が忘れられて、ダムの悪いところだけに目がいってしまっている。

――八ッ場ダムは50年以上もかかってまだ完成していない。なぜそんなに時間がかかるのか。

   前原さんにも言ったが、時間がかかったのは行政が真摯に対応してきたからだ。住民も大変だったと思うが、役所も莫大な時間をかけて誠意を見せながら話し合いをしてきた。何十年かけて大変な努力をして、ようやく合意にこぎつけた。名もない数多くの人が、このダムのためにどれだけ汗と涙を流してきたか。それは「安全のためにはやらねばならぬ」という強い思いがあったからで、既得権とか天下りのためだと言ったら、本当に一生懸命やってきた人は怒るよ。
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