記者や学者の操縦は簡単 財務省に蓄積されたノウハウ(元財務官僚 高橋洋一さんにきく<中>)

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ファーストクラス乗せて学者籠絡

――審議会などの存在も、役人の筋書きを権威付けるために利用されているだけだ、という指摘もあります。

高橋   その通りです。まず人選。学者については著書を読めばどういう立場かすぐ分かるので、例えば賛成派9割、反対派1割という具合にまとめます。反対派を増やさざるを得ない状況もありますが、やり方はあります。反対派の人の都合の悪い日に会合を設定する、などはよく使う手です。タイムスケジュールも結論も最初から決まっています。「5月の連休明けに結論を出すから逆算して……」と段取りをつけます。
   誰が何を言いそうかは、データベース化しています。私も少し関わっていましたが。色分けが済んでいて、誰を選べばいいか、誰を避けるべきか瞬時に分かります。審議会のメンバーになると、海外出張の予算が付きやすいなどの「特典」もあります。で、その際財務省の役人も「おもてなし」のため付いていきます。私もやったことがありますが、外務省に任せるなんてとんでもない、財務省が入管から完全に自前でアテンドをやります。入管は待たずにすっと通れます。
   担当の役人が直接話をつける訳ではないのですが、航空会社への出資・融資関係にちょちょいと声をかければ、簡単にファーストクラスなどのアップグレードチケットが入手できます。当日になって学者に「何故だか知りませんがファーストクラスに変わってました」などと言って勧めれば、大喜び、大感激で乗っていきます。まあ、感激しそうなタイプの学者を選んでる、というのもありますが。これを重ねると役所に好意的になっていきますね。

――スキャンダルをマスコミに流す、ということはあるのですか。

高橋   私は流したことはありませんが、そういうケースはあります。私が内閣参事官をしていた安倍政権のとき、政府税調の会長だった本間正明教授が(2006年末に)スキャンダルで辞任したことがありました。これは伏線がありまして、当初、財務省から上がってきた会長案は石弘光さんでした。しかし、方針の違いなどから塩崎官房長官が「官邸主導でやる」と財務省案を差し替えました。すると、ほどなくスキャンダルを流された。情報を全部持っていたのは財務省。ああいうタイミングで「愛人」――これは不正確なマスコミ表現でしたが――と官舎問題を一緒にしてスキャンダルとしてやられたと見ざるを得ません。

――国会議員との関係は。

高橋   徹底的に足を運んで折伏します。土下座する人もいますし、私なんかはあっさりやっていました。勉強している真面目な政治家は意外といるのですが、こちらが「要路」、手順を間違えなければ折伏できます。情報を流す順番とかタイミング、そのノウハウが、財務省には特にしっかり蓄積・伝承されていました。

<下>に続く)


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。現在、J-CASTニュースで「高橋洋一の民主党ウォッチ」を連載中。

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