1月1日、元日。1年の始まりの新聞紙面には各社の特徴が色濃くにじみ出る。2008年は環境問題、2009年は経済・雇用問題に焦点が当てられた。2010年の新聞社説は「日米関係」に注目するが、その書き方には各社の特徴が出ている。
朝日、読売は「日米同盟」を焦点あてる
2010年元日の新聞社説を読み比べたところ……
朝日新聞は今年50周年を迎える「日米安保体制」に焦点を絞った。「いざというときに日本を一緒に守る安保と、憲法9条とを巧みに組み合わせる選択は、国民に安心感を与え続けてきた」と日米同盟が果たしてきた役割を評価しつつ、「日米の両国民がより納得できる同盟のあり方」を見いだす努力が日米両政府に求められていると書いた。
普天間基地の移転問題をめぐって日米関係がギクシャクしている点については「長期的な視野から同盟の大事さと難しさを論じ合う好機でもある」とプラス面にも注目。「日米両政府の指導層が緊密に意思疎通できる態勢づくりを急がなければならない」と書くのみで、他紙のように鳩山政権に強い批判は浴びせなかった。
対照的なのが、読売新聞だ。朝日と同様に社説の中心テーマとして「日米同盟」を取り上げたが、鳩山政権に対する厳しい言葉が並んだ。「東アジア共同体構想を掲げ、米国離れを志向する鳩山首相の言動は極めて危うい」と新政権の外交姿勢への強い懸念を表明。「米国との同盟関係を薄めて、対等な関係を築くというのは、現実的な選択ではない」と批判した。
経済成長を続け、軍事的にも存在感を増す中国と良好な関係を築くことの必要性を認めつつも、「民主主義、人権尊重、思想・信条の自由という普遍的価値を共有するアメリカとの関係強化を、アジア・太平洋の平和と安定の基礎に置く視点が不可欠である」と日米同盟の強化こそが日本の繁栄につながると強調した。
「経済政策」語る日経と「愛国心」訴える産経
一方、日経新聞や産経新聞、毎日新聞は日米関係に少し触れながらも、他のテーマに字数を割き、それぞれの特色を出した社説を掲載した。
日経は「未来への責任 繁栄と平和と地球環境を子や孫にも」と見出しを打って、財政や社会保障、環境問題で「将来世代」にツケを回すなと主張した。特に、社会保障面での世代間格差に注目。「(団塊世代の)負担をないがしろにして財政支出を続け、その帳尻を国債発行で埋めてきたツケが、今の若い世代や未来の世代にずしりとのしかかる」と危惧し、増税や年金給付削減などの財政改革の必要性を訴えた。
経済紙らしく、現在のデフレ基調からの脱却策も提言。財政・金融面から需要喚起とともに、「長期の視点から経済体質を変える必要がある」と説いた。具体的には、政府の規制で成長が妨げられている分野として、医療や電力、農業、介護などを指摘。「競争を促進すれば、実は潜在的な成長分野である」と、規制緩和による産業振興を求めた。
これに対して、「愛国心」の重要性を訴えたのが産経新聞だ。通常の社説の代わりに、「『国思う心』が難局を動かす」と題した中静敬一郎・論説委員長のコラムを一面に掲載した。飛鳥時代の白村江の戦い(663年)における故事を引き合いに出しながら、いまの国家指導部や国民には「国を思う力」が欠けていると嘆いている。
昨夏の総選挙で民主党政権を誕生させた国民に対しては、「優しいスローガンやばらまきを歓迎」して、「危機を呼び込んだ」と批判。鳩山政権にも「他者依存や甘えの方向に人心を駆り立てていないか」と疑問を呈し、「『友愛』より『国思う心』で難局を乗り越えてほしい」と注文をつけた。
一方、毎日新聞はどこかのんびりムードだ。今年は平城遷都1300年ということで、奈良・平城京に都を建設した710年のころの日本に注目。内憂外患の大きな危機を克服して、国を再建したという歴史を紹介した。
また当時の奈良は、各国から僧侶らが訪れる国際的な都市で「発信力」が高かったとして、現在の日本でも「発信力を高めることが日本の再建にもつながる」と提言した。ただ、現在の日本が抱える課題についてはほとんど触れておらず、新年のはじまりらしく、ほのぼのとした内容だった。