首都圏マンションに明るさがのぞいてきた。不動産経済研究所は2010年の首都圏マンション供給を22.9%増の4万3000戸と予測している。「在庫調整もほぼ終わり、止まっていた工事が動き出す」(企画調査部)と見ている。
一方、2009年11月の首都圏中古マンションの価格は前月比2.4%上昇して2833万円となり、09年4月に割り込んだ2800万円台を回復した。東京都では1.8%上昇し3778万円、神奈川県でも1.0%上昇の2448万円で、1都3県のすべてでプラスとなった。不動産情報を提供する東京カンテイの調査によるものだが、足元のデータも「回復」の兆しをうかがわせている。
2009年は「どん底」だった?
不動産経済研究所は、「09年は5月のゴールデンウイーク以降、いわゆるアウトレットマンションをはじめ、価格が下落したことで契約率は上がっていた」という。在庫物件も年初に約1万2000件あったものが6800件程度まで下がってきている。一方、着工件数は10月までに3万4618件(申請ベース)と、前年同月比60%減と大きくしぼった。
こうしたことから、09年の供給戸数は前年比20.0%減の3万5000戸(見込み)。これに対して2010年は「工事中止や延期物件の復活」を理由に、22.4%増の4万3000戸と予測した。
「08年のマンション着工は申請ベースで10万件超あった。それなのに、09年の供給件数が3万5000件では、申請後の用途変更を考えても単純に7万件近くが眠っていることになる。この中に工事の未着工や延期物件が含まれていて、2010年はこうした物件が動き出す」とみている。
09年秋口以降、これまでマンション市場を支えてきた再販売のアウトレットマンションに代わって、用地費用や建築コストが一段と下がった低コスト、低価格の「ユニクロ物件」が登場しはじめたことも、明るい材料だ。
東京駅から20キロ圏内物件の売れ行きが好調
みずほ証券チーフ不動産アナリストの石澤卓志氏も「マンション販売は最悪期を脱した」と判断している。
「09年後半から、東京の下町エリアなどで値ごろ感が強まってきた。マンションの販売データ(初月契約率)にはあまり反映されていないが、マンション販売会社に聞くと、東京駅から20キロ圏内、1戸あたり3000万円~4000万円程度の物件の売れ行きが好調という」と話している。
いま売れている物件の多くは、富裕層向けの高額物件ではなく、もともと購入を検討していた人が価格の低下を機に買い求めているものなので、「息の長い回復期になる」という。
とはいえ、不安もくすぶる。不動産経済研究所は「正直、政府が何も打ち出せないでいることが大きな懸念材料」と、鳩山政権への不満を口にする。政府の住宅政策には「住宅版エコポイント」があるが、これがどれほどの住宅販売の回復につながるかは不透明。同研究所は「やはり資金支援。住宅ローン減税の継続がポイントになる」と指摘する。
4万3000戸というマンション供給数はまだまだ低水準。「復調」とは言いがたい状況に変わりないが、いまの景気動向からは今後1~2年程度はマンション価格も低下傾向にあり、購入しやすい状況が続く。みずほ証券の石澤氏は、「売れ行きは徐々に回復して、価格が完全に底値になるのは2011年春頃」と予測している。