豆乳飲料に「マロン」「焼きいも」「白桃」といったバラエティ豊かな味が登場している。ここ数年、豆乳の生産量は低迷していたが、2009年に入り「デザート感覚で飲める」と若い女性に売れ始め、かつてのピーク時に迫る勢いを見せている。
かつて豆乳は健康ブームに乗って売れ、05年のピーク時は無調整豆乳、調整豆乳、豆乳飲料を合わせて21万7042トンを生産した。なかでも中高年の女性に人気が高かったのは、豆乳をはじめとする大豆製品には「大豆イソフラボン」が含まれていて、女性ホルモン「エストロゲン」に似た働きをすると言われていたからだ。
「デザート感覚で飲める」
ところが、大豆イソフラボンのサプリメントの過剰摂取について厚生労働省が06年に注意を呼びかけると、影響を受け豆乳生産量は減少に転じた。06年は19万9745トン、07年16万5212トン。昨08年も減少傾向は続き16万2979トンと、05年の約75%にまで落ち込んだ。
巻き返しを図ろうと、メーカー各社はいろんな味の豆乳飲料を売り出している。
秋冬限定の「豆乳飲料 マロン」と「同 焼きいも」を発売しているのは、メーカー最大手のフードケミファ(東京都中央区)。若い女性に好評で、発売を開始した09年8月から10年3月末までにマロンを100万パック、焼きいもを120万パック販売する当初の計画を、09年12月までに達成した。
広報担当者は、
「これまで豆乳は中高年女性に人気がありました。でもマロンや焼きいもは女子高校生をはじめ若い女性を中心に、『デザート感覚で飲める』と好評です。また、豆乳に含まれる大豆イソフラボンが化粧品に使われていることから、美肌にいいというイメージが広まっているのも人気の理由だと思います」
と話している。
ピーク時に迫る勢い
マルサンアイ(愛知県岡崎市)も、これまで豆乳を飲んでいなかった若い女性をメインターゲットにしたシリーズ「ひとつ上の豆乳」を09年3月に西日本で発売し、9月から全国展開している。
豆乳の為に共同開発した新品種国産大豆「きぬさやか」を使うというこだわりようで、「成分無調整」の豆乳、飲みやすい「紅茶」と「白桃」味の豆乳飲料の3品が揃う。またパッケージは豆乳製品に多い緑色や白色をやめて濃い紫色にしたのも、従来の豆乳のイメージを拭い、抵抗なく飲んでもらうためだ。
広報担当者は、
「09年3月~10年2月の販売目標は3品あわせて3億円で、今のところ順調に達成しそうです。当社の豆乳は主に40歳代以上の女性に飲んでいただいていますが、『ひとつ上の豆乳』に関しては8割が20~30歳代となっていて、裾野を広げることができました」
といっている。
2010年春には「ひとつ上の豆乳」から新しい味の豆乳飲料を売り出す予定だ。
日本豆乳協会の調べによると、09 年1月から9月に国内で生産出荷された豆乳は1~3月期が前年同期比26.9%増、4~6月期が同16.9%増、7~9月期が同18.6%増だった。分類別にみると、7~9月期は無調整豆乳が22.3%増、調整豆乳は20.0%増、豆乳飲料は13.7%増と、いずれも前年同期を上回った。
同協会の担当者は、「このままいけば、09年の生産量はピーク時の年間20万トンに迫る勢いだ」と期待を寄せている。