今やエコカーの代名詞となったハイブリッドカー(HV)。長引く不況のなかで新車販売は低迷を続けているが、トヨタ自動車の「プリウス」とホンダの「インサイト」は記録的なペースで販売台数を伸ばしている。加えてトヨタは2009年12月14日、バッテリー充電のみで最大23.4kmの電気自動車走行ができる「プリウス プラグインハイブリッド」を発表。低燃費、低排出を謳うHVがますます脚光を浴びている。
この一方で自動車業界内ではHVに関する不穏な噂も飛び交っている。整備工場や事故車レスキューの現場における感電事故の問題だ。HVは、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせることで燃費性能を格段に向上させている。このため、HVには通常の車に搭載される12ボルトのバッテリーに加え、最大600ボルトで電気モーターを回すHVバッテリーを搭載している。
「程度の差こそあれ、HVの感電事故は発生している」
しかも普通のバッテリーと比べると電流の量も多い。取り扱いを誤れば重大な事故につながりかねない。当然、自動車整備や事故現場では対応に細心の注意を払う必要がある。
しかし、HVの取り扱いに関する専門資格などは存在しない。労働災害防止の観点から厚生労働省や業界団体が『低圧電気取扱特別教育』の受講を整備事業者に推奨しているにすぎないのが実情だ。この特別教育は30年以上前に電気工事事業者などを対象に創設されたもので「自動車整備業の実態にそぐわない」との声も受講者から聞こえている。
実際、ハイブリッド車に対応する救助活動を学ぶ研修会などが各地の消防署や警察署で開かれている。交通事故などの救助活動の際、感電する危険があるからだ。
では、HVで感電事故は起きているのか。「程度の差こそあれ、事実、HVの感電事故は発生している」と整備業界関係者は語る。
指定通りの作業行えば事故発生の可能性極めて低い
自動車メーカーは、HVの取り扱いに関する適切な作業手順を系列ディーラーに教育しているほか、業界団体を通じて系列外の整備事業者にもメンテナンス情報を提供している。また、HVのシステム上、指定通りの作業を行えば感電事故が発生する可能性は極めて低い。このような状況にあってもなお、感電事故が発生するのは「注意事項を順守していない事業者が存在するからだ」と指摘する業界関係者は少なくない。
もちろん、情報発信側のメーカー・業界団体側のさらなる努力も必要だ。HVの普及スピードが急速になっている今、ディーラー関係者からも「HVの専門教育を制度化するなど、何らかの形で行政にも動いてもらいたい」といった意見が出始めている。HVの普及速度が加速するなか、感電事故防止に向けた今後の対策が注目される。