ジャニーズ事務所が「第60回NHK紅白歌合戦」のネット配信をNHKと合意した。ジャニーズ事務所と言えば著作権、肖像権に厳しく、これまでネット上での所属タレントの写真や映像の使用を原則禁止にしていた。雑誌の表紙であっても写真は掲載しない、という徹底ぶりだったが、何がジャニーズ事務所の方針を変えたのか。
NHK広報によれば、「SMAP」「嵐」「TOKIO」などジャニーズ事務所所属のアイドルグループが出場する2009年12月31日放送の「紅白歌合戦」を、有料の「NHKオンデマンド」で配信する。配信期間は10年1月1日から11日までで、購入から24時間は何度でも視聴可能という。ただし、ジャニーズの配信は今回の番組に限ったことで、今後、他の音楽番組などに出演したものを配信できるかどうかは未定としている。
ドラマ主演でも写真は「絵」だった
ジャニーズは所属タレントをネットで配信することに関し非常に厳しい態度を取ってきた。例えば、「SMAP」の香取慎吾さんがフジテレビ系ドラマ「西遊記」に出演した際も番組ホームページは「孫悟空」のイラストだった。「KAT-TUN」の亀梨和也さん、「NEWS」の山下智久さんが主演した日本テレビ系のドラマ「野ブタ。をプロデュース」でも、他の出演者の顔写真が掲載されているのもかかわらず、顔を隠している写真だった。
そうした中、対応の変化が見られたのは08年から。日本テレビ系「1ポンドの福音」の公式ホームページには、亀梨さんの「写真」が掲載された。フジテレビ系「ハチミツとクローバー」には、生田斗真さん、TBS系「佐々木夫妻の仁義なき戦い」には、稲垣吾郎さんの「写真」があった。ただし、亀梨さん、生田さんの「写真」は、実は写真を加工した「絵」だった。稲垣さんの場合は、顔を殴られたような「加工」がなされていた。
一方、CMの専属契約をしていたタレントに関しては違っていた。「SMAP」の木村拓哉さんはニコンのホームページの「アドギャラリー」に同社のカメラを手にした写真を3年前から掲載。同じく草なぎ剛さんは、ヤマサ醤油の「ポン酢醤油」のCMに出演しているが、このCMのシリーズが2年半ほど前からヤマサ醤油のホームページで公開されていた。ニコンとヤマサ醤油によれば、広告代理店を通じジャニーズから使用許可を得たという。使用料などが発生し、写真や動画が複製できないようにセキュリティーを強化したことで掲載が可能になったという。
インターネットのセキュリティー技術が向上した?
ジャニーズは09年12月24日にマスコミ各社に対し、「紅白歌合戦」のネット配信を許可した理由をコメントした。それによれば、メディアが多様化する中、インターネットのセキュリティー技術が向上し、著作権・肖像権などに対する社会の意識が高まっているといった諸状況で決めた、ということだった。
ネットでは、今回のジャニーズ事務所の方向転換についての憶測が流れている。NHKを始め、各放送局がネット配信に力を入れている現状では、ネットを許可しないジャニーズ事務所のタレントの出演する機会が失われる可能性があることや、CM契約を結んでいるタレントに関してはネットでの掲載を許可しているため、出演番組だけを断る「整合性が取れなくなってきた」などが挙げられている。