政権発足100日目という記念すべき日に、元秘書が政治資金規正法違反で起訴された鳩山由紀夫首相。釈明会見で国民に向けて謝罪しつつも、続投することを表明した。その表情は弱々しく、目もうつろだった。
2009年12月24日のクリスマスイブ。本来はカップルで賑わうはずの東京都内のホテルに、200人を超える報道陣が集まった。会見予定時刻の午後6時きっかりに登場した鳩山首相の表情は固い。報道陣には、事件の経緯と今後の進退について説明した「国民の皆さまへ」と題されたA4大の資料が配られた。
ニコリともすることもなく、凝固した顔で答えていく
政治献金問題について釈明する鳩山由紀夫首相
鳩山首相はその資料に書かれている内容をそのまま読み上げ、その後、記者からの質問に応じた。会見は1時間10分間に及んだ。その間、ニコリとすることもなく、石膏像のように凝固した顔で答えていく。声は弱々しい。政権100日を迎えたリーダーの高揚感はまったく感じ取れなかった。
野党時代の2003年、鳩山首相はメールマガジンで「秘書が犯した罪は政治家が罪を受けるべきなのです」と書いている。しかし元秘書が起訴されたのにもかかわらず、鳩山首相は辞任しようとしない。そのことの整合性をどう説明するのか。このような質問に対して、鳩山首相は「過去の発言に対して否定するつもりはありません」と言いながらも、今回のケースは例外だと強弁した。
「過去の事件を顧みて思うのは、私腹を肥やしたり不正の利得をしながら、それを公表しないという偽装が中心だったと思っています。今回の件に関しては、私腹を肥やしたという思いは一切ない。不正な利得を得たという思いも一切ない。私は責任の取り方としては、反省すべきことは反省します。しかし、政権交代という多くの方々にご支持いただいた連立政権の歩みを止めるわけにはいかない」
このように続投表明をした鳩山首相だが、もし国民の批判がさらに強まった場合には、辞任するつもりだという考えも明らかにした。
「国民の皆様に対して、自分なりに説明していきたいと思いますが、それでもご理解を得られない場合、『鳩山やめろ』という声が圧倒的になった場合には、国民の皆様の声を尊重しなければいけないと感じています」
「どうせ信じていただけないかもしれませんが」
報道陣に頭を下げる鳩山由紀夫首相
このように弁明した鳩山首相に対して、日本インターネット新聞(JanJan)の田中龍作記者は「総理の言葉は軽くて信用できない」と厳しい言葉をぶつけた。「秘書の責任は政治家の責任」という過去の発言と矛盾する行動や、総選挙前に首相会見をフリーやネットメディアにも開放すると公言していながら未だにオープン化していないことをあげながら、
「総理がいくらきれいな言葉を並べても、世の中は『また、鳩山さんはウソをついている』としかとらない」
と指摘。首相の「言葉の軽さ」についての見解をたずねた。鳩山首相は「軽いと言われれば、反省しないといけない」と述べつつ、次のように答えた。
「過去の発言については言い訳するつもりはありません。それから、記者クラブというか、記者会見の開放に関しては、来年からもっと開放されるようにやるようにと、申し伝えているところであります。本来ならば100日前にやらなければならないことでありましたがが、なかなか諸事情、スペースの問題もあって進んでいないことは申し訳ないと思っています。どうせ信じていただけないかもしれませんが、このことに関しては私の決意は変わっていません」
選挙前の約束に反して首相会見がオープン化されなかったことは、鳩山首相の「公約破り第1号」としてネットで厳しく批判された。つまずきの石は最初にあったともいえる。政権発足100日という節目の日に「再出発」を誓った鳩山首相だが、今日の言葉は信じることができるだろうか。