高橋洋一の民主党ウォッチ
民主の国債44兆円方針 長期金利上がってしまうのか

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   政権交代後はじめての予算編成が大詰めを迎えているが、今回ほど国債発行額が話題になったのは、小泉政権時代の「30兆円以下」以来だろう。自公政権での概算要求(2009年8月末)はシーリング(要求上限)があったので92兆円だったが、民主党政権の概算要求(10月15日)はシーリングがなかったので95兆円。話題を集めた事業仕分けではこの要求増加に対処できず、早くから国債発行額44兆円以内という方向が出されて、それによって歳出総額を抑制するつもりだった。

   当時から税収37兆円程度、埋蔵金等税外収入10兆円程度、それに国債44兆円で、歳出総額は92兆円程度という目算だったが、ほぼその通りになっている。

ポジショントークに注意

   この国債44兆円は、09年度の当初予算と補正予算の合計国債発行額であるが、今議論になっているのは10年度の当初予算だけであるので、民主党政権では国債発行額が大きくなるという連想が働いてしまう。そこで、市場関係者の間では国債発行増加により長期金利の上昇懸念が多い。

   そこで、「国債消化難になって金利上昇」のシナリオと「国債消化はまだ可能で金利上昇はない」シナリオの2通りが出てきて、方向感がなくなっている。

   ここでまず注意すべきは、市場関係者のシナリオはポジショントーク(その人がもつ債券ポジションに有利にする話)が多いということだ。筆者はかつて旧大蔵省国債課に勤務したことがある。発行当局であるので、金融機関のもつ債券ポジション(これは企業秘密)について特別な情報に接していたが、なぜか市場関係者の話はその債券ポジションと大いに関係していたことを覚えている。業者であるから当然と言えば当然であるが、その当時は政府の財務諸表が不十分な状態であったので、人によってはかなり手前味噌のことをまことしやかに話していた。その教訓もあり、今から15年ほど前、筆者は日本初の政府B/S(貸借対照表)を作成した。その後改良され10年ほど前から政府B/Sは公表され続けているので、今では信頼できるといえる。それを踏まえて、金利上昇シナリオと金利上昇なしシナリオを見比べておこう。

   金利上昇の根拠は大量の国債発行だ。単純なものとして、来10年度国債発行44兆円は歳出総額92兆円のほぼ半分、国債依存度5割であるので、家計でみれば借金5割で破産状態という。国を家計にたとえるのは、家計が貯蓄主体(黒字主体)であるからミスリーディングだ。それに、例えば、日本の歳出のうちには国債整理基金への繰入が10兆円ほどある。これは来年の借金の返済のために今年の借金をさらに増やすことであり、海外ではこうした制度はない。このため、国際比較の観点でいえば、来年度の国債発行は実質34兆円、歳出総額は実質82兆円である。この国債依存度でも大きいともいえるが、こうしたフローの国債発行額の数字はかなり恣意的なものであることがわかるだろう。

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