3ケタジーンズ「ありえない」 川久保玲さん発言で物議

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   いい物は高い、格安3ケタジーンズはありえない――。ファッションデザイナーの川久保玲さん(67)がこう発言して、論議を呼んでいる。コスト削減ばかりを追い求めると、いい物を作れなくなり、長い目で見て利益にならないというのだ。

   川久保玲さんと言えば、かつて高級既製服プレタポルテの旗手として一世を風靡した。自らのブランド「コムデギャルソン」を1969年に立ち上げ、81年にはパリ・コレクションにデビュー。カラス族を生んだ黒ずくめの服で異彩を放ち、その後も前衛的なファッションを次々に発表している。

ネット上では、3ケタジーンズ否定に異論も

3ケタジーンズへの疑問を告白
3ケタジーンズへの疑問を告白

   その大御所が、今度はネット上で脚光を浴びた。それは、朝日新聞の2009年12月21日付インタビュー記事においてだ。

   同社編集委員の質問に、川久保さんは、売ることばかり考えるとファッションが見えないとあがいていると明かすと、次のように訴えたのだ。

「ジーンズ1本が何百円なんてありえない。どこかの工程で誰かが泣いているかもしれないのに、安い服を着ていていいのか。いい物には人の手も時間も努力も必要だからどうしても高くなる。いい物は高いという価値観も残って欲しい」

   もちろん、言及しているのは、ジーンズの価格破壊だ。

   ユニクロ系列店が09年3月、990円というジーンズを発売したのをきっかけに、競争が激化。流通大手のイオンなどが880円で、さらにドン・キホーテに至っては690円で売り出した。

   3ケタへの価格下落で、リーバイスなどの既存ブランドは、売り上げが激減している。川久保さんは、安さを求めた結果、若い人たちの創造性が失われていくのも心配だというのだ。

   これに対し、ネット上では、3ケタジーンズ否定に異論も相次いでいる。2ちゃんねるでは、川久保さんに同調する意見もあるが、「いいものを安く作ろうという努力観はないのか?」「ブランドと言うバッチだけで高価な商品が多くなりすぎた」といった書き込みも多い。

「ウェブに前向きではありませんので、(取材は)お受けできません」

   川久保玲さんが社長のコムデギャルソンでは、ユニクロなどの量販店と1ケタ違う価格の衣料品が多いようだ。

   通販サイトを見ると、外国人イラストレーターを起用したTシャツが1万3440円、英モーターサイクルジャケットのブランドとコラボしたスニーカーが3万5805円、4万2000円で売られていた。

   同社に取材しようとしたが、プレス担当者は、「弊社は、ホームページもなく、ウェブに前向きではありませんので、お受けできません」とのことだった。さらにネット上の異論について聞くと、「個人個人でお思いになられたことですので、何も申し上げることはありません。記事に出たのが川久保の意見で、それ以上でもそれ以下でもないです」と話した。

   ジーンズ販売現場では、「3ケタ」への対応の違いで、考え方が分かれている。

   880円の商品を売り出したイオンでは、品質についてこう弁護する。

「スケールメリットなどで、品質のよいものを安くできています。委託先の工場に継続的に発注していることから、スキルが上がり、生産性もアップしています。機能はしっかりしており、一定基準をクリアしています。洗い加工を加えた1980円のジーンズも揃え、デザイン性でもお選びいただけます。いろんな意見があるようですが、無理に安くしているわけではなく、合理的な仕組みで利益を上げているんですよ」

   2009年8月に880円ジーンズを発売して、3か月で70万本も売り上げたという。

   一方、リーバイスなど既存ブランドを主に扱っているジーンズメイトでは、3ケタジーンズについてやや懐疑的な見方だ。

「薄い生地や原価の安いボタンなど、それでもいいというお客さまで成り立っているようですね。工場で余ったものを使っているといううわさもあり、生地がなくなれば安定的に供給できなくなるのでは。うちは『ジーンズ』の名前をうたっていますので、ある程度クオリティのあるものでやっています。丈夫にできていて安心というブランドバリューがありますからね。わざと古着っぽくするなどファッション性を出すと、コストもかかるんですよ」

   1万円以上のブランド物もあるが、安くてもクオリティのある1990円の商品も揃え、2極化する客のニーズに応えていきたいともいう。

姉妹サイト