鳩山マニフェストの目玉だった「子ども手当」は首相の決断によって、民主党が求めていた所得制限が実施されないことになった。マニフェストを死守した格好だが、問題は財源をどうするかだ。鳩山首相は「地方負担」を求めることを決めたと伝えられるが、地方自治体から反発する声が上がるのは必至だ。
民主党が2009年12月16日に政府に提出した2010年度予算の要望書では、子ども手当について所得制限を要望するとともに、「地方には新たな負担増を求めない」としていた。
「子ども手当の負担を神奈川県はボイコットする」
ところが、鳩山首相が12月21日に「所得制限なし」を発表した際、「地方負担」の有無については言及しなかった。その後、朝日新聞が22日未明に「子ども手当の財源として、国費だけでなく地方や企業にも負担を求める方向で調整に入った」と報道。時事通信も同日夕方、菅直人副総理が総務・財務両省の合同政策会議で「今まで児童手当等で負担していただいていた範囲内では負担していただくが、それを超える負担は求めない」と述べたと、伝えた。
現行の児童手当では、2009年度予算の支給総額1兆160億円のうち、地方自治体が5680億円、企業が1790億円を負担している。もしこれと同規模の地方負担を求めるとなると、地方自治体から強い反発が出るのは必至だ。
反対派の急先鋒は神奈川県の松沢成文知事。かつては民主党所属の衆院議員だったが、子ども手当の地方負担については「断固反対」の立場をとっている。松沢知事は12月8日に首相官邸を訪れ、平野博文官房長官に抗議文を手渡すとともに、もし実施した場合は「ボイコットする」と宣言した。民主党の要望書が提出された後の18日の会見でも、
「どんな形であれ、子ども手当の地方負担は絶対に認めることはできない。もし、政府が地方負担を強行するのであれば、これまで何度も申し上げている通り、地方自治と地方財政を守るために、子ども手当の負担を神奈川県はボイコットし、あらゆる法的措置を講じて闘っていくつもりだ」
と徹底抗戦の意志を表明している。
「地方分権に逆行する国の一方的なあり方は許せない」
松沢知事の動きと呼応して、全国知事会や全国都道府県議会議長会など地方六団体も12月10日に「子ども手当の地方負担に反対する緊急声明」を発表。
「国の財政上の都合のみを理由として、子ども手当について、かりそめにも地方負担を求めるようなことがあれば、地方の反発は極めて大きく、国と地方の関係は深刻な事態に陥ることを十分認識すべきである」
と警告している。都道府県の知事だけではない。三重県松坂市の山中光茂市長は12月16日に臨時記者会見を開き、
「地域の独自性や地方分権に逆行するような国の一方的なあり方というものは、許せるものではない」
と政府を批判。子ども手当の地方負担を拒否する姿勢を明確に打ち出した。
菅副総理は12月22日の総務・財務両省合同政策会議で「(地方負担は)最終的に鳩山由紀夫首相の方で決定いただいた」と述べたという(時事通信)。鳩山首相なりの「決断」をした結果だろうが、地方から猛反発が出るのは間違いない。