不景気の影響で客離れが進む地方百貨店は、稼ぎ時の年末年始、あの手この手でお客を取り込もうとしている。大手スーパーマーケットのように元旦から初売りするところも出てきた。
日本百貨店協会によると、2009年11月の全国百貨店売上高は前年同月比11.8%減だった。都市別では札幌が前年同月比7%減、仙台9.7%減、東京11.9%減、横浜9.4%減、名古屋13.6%減、京都13.8%減、大阪13.9%減、神戸16.8%減、広島9.3%減、福岡15.6%減と、全国的に厳しさが続いている。
社員がサンタの格好でプレゼント届ける
地方百貨店が苦戦しているのは、郊外型の大型スーパーマーケットやショッピングモールに客を取られたからだ。閉店も相次いでいる。
北海道の老舗、丸井今井は旭川店を09年7月20日に閉鎖し、室蘭店は2010年1月20日に営業を終了する。そごう心斎橋本店(大阪市)は09年8月31日に、西武百貨店札幌店は9月30日に閉店した。北陸を基盤とする大和(金沢市)は新潟県と石川県の4店を2010年4月から6月にかけて閉める。松坂屋岡崎店(愛知)は2010年1月31日で閉店する。
そんな中、百貨店がもっとも活気づく年末年始に向けて、新しい試みを行うところも出てきた。
そごう大宮店はクリスマスプレゼントを購入すると、09年12月24日にサンタクロースの格好をした社員が届けてくれるイベントを初めて行う。10人限定で、12月20日までにおもちゃ売り場など指定の店でプレゼントを購入した人の中から選ぶ。
広報担当者によると、小さい子どもを持つ親に人気があり、最終日にプレゼントを買いに駆け込んだお客さんもいた。プレゼントが前年よりも売れたので、イベントの効果はあったようだ。ただ、宅配できる地域がさいたま市内に限られているため、応募したのは20人だった。
「ガンプラEXPO」に、元旦から初売り
阪神百貨店(大阪市)では12月25日まで、人気アニメ「ガンダム」の歴代のプラモデルを展示した「ガンプラEXPO」を関西で初めて行っている。
初日の12月19日には開店前から170人が並び、その後もしばらくは入場を規制する人気ぶりだった。あまり百貨店を利用しない30~40歳代の男性客が多く集まったこともあり、広報担当者は「イベントによる集客の効果は大きかった」といっている。
全国的に1月2日に初売りをする百貨店が多いなか、元旦に早めるのは九州の5店舗だ。井筒屋本店、同コレット、同黒崎店(いずれも北九州市)、くまもと阪神(熊本市)、トキハわさだタウン(大分市)は2010年から元旦に営業することを決めた。
元旦初売りを他社に先駆けて決めた井筒屋の広報担当者は、
「正月休みが3日までなので、2日からの営業では年始のセール期間が短くなってしまいます。売上げの前年割れが続き、1月も厳しいのは見えていますが、初売りを早めることで少しでもマイナスを食い止められたら、と期待しています。また、元旦から営業している郊外型の大型商業施設にお客を取られるのを防ぐのも、初売りを早めた理由です」
と話している。
日本百貨店協会によると、ほかに初売りの開店時間を午前10時から9時に繰り上げる店もあるそうだ。