NHK教育で17年前から放送されているアニメ「忍たま乱太郎」。意外なことに、大人の女性に大人気で、特にボーイズラブを好む「腐女子」から圧倒的支持を得ているのだという。イケメン俳優を集めたミュージカルも制作される。お子様向けアニメだったはずなのだが、いったいどうなっているのか。
「忍たま乱太郎」は子供忍者が活躍するギャグアニメ。尼子騒兵衛原作の「落第忍者乱太郎」は1986年から朝日小学生新聞で連載がスタート、1993年からNHKでアニメ化された。主人公の少年、乱太郎が忍術学園に入学し一流の忍者になるために勉強に励む姿が描かれてきた。もともとは子供達に大人気だったのだが、08年4月から放送された16期の回から、様子が一変した。
単行本やDVD、関連グッズがバカ売れ
何が変わったのかというと、「乱太郎」の上級生に当たる年長組のキャラクターが多数登場したからだ。イケメン揃いで主人公をくう活躍をし始めた。また、時代考証、忍びの掟、人間像が細かく描かれ、作品に深みが増した。「お子様向け」だけでは語れない内容になったのだ。これは原作が変化したためで、
「以前は子供がピョンピョン跳び回るメージでしたが、作画が変化し、内容もシビアなシーンが盛り込まれた。特に、登場する先生達がキラキラとイケメンになっているのが大きい」
と朝日小学生新聞の編集部は説明する。
これに飛び付いたのが、ボーイズラブを好む「腐女子」と、同人誌などを制作する「同人」と呼ばれる女性達だった。人気は一気に加速し、「乱太郎」の単行本やDVD、関連グッズがバカ売れ。漫画・アニメ専門店「アニメイト」では09年夏に全国約90全店舗で「忍たま乱太郎フェア」を開催。他社の専門店でも「乱太郎コーナー」が続々誕生した。
また、09年夏に開催されたコミックマーケットには56万人が来場したが、中でも人気を集めていたのが「乱太郎」関連の同人誌だった。マンガ専門の古書店、まんだらけの広報によれば、同社が販売する「乱太郎」関連の同人誌は、2年前まで殆どなかったが、現在はその100倍に増え、売れているのだという。
ちなみに、同人誌が取り上げているテーマの多くがボーイズラブ。キャラクターの中からカップルを設定し、その「恋愛」を描いている。
ミュージカルの観客は大人の女性や「腐女子」
まんだらけ広報によれば、アニメが大人の女性や「腐女子」に人気が出た理由として、まず、声優陣が豪華で、それに惹かれた人達がアニメを見るようになったことを挙げる。また、1年生の「乱太郎」だけでなく、08年からは個性的な上級生(15歳)が多数登場。彼らの活躍が増え「性的な妄想」の余地が出てきた、という。
忍術学園の生徒は寮生活(男子生徒の集団生活)をしていて、その中の委員会に所属している上級生、下級生の関係が想像を生み、ウケたのだろう、と見ている。
さらに、2010年1月には片岡信和、橋本淳、山口賢貴などイケメン俳優を起用する「ミュージカル 忍たま乱太郎」が「東京ドームシティ シアターGロッソ」で上演される。「乱太郎」の上級生達が主役のミュージカルだ。企画・制作の「映人」によれば、舞台化するきっかけは、アニメが大人の女性に大人気だったこと。配役について初めはイケメンにこだわっていたわけではなかったが、アニメのキャラクターに合う人選をした結果、自然とイケメン揃いになったそうだ。このミュージカルの観客は、アニメファンのお子さんやその両親の来場よりも、大人の女性や「腐女子」が多くなるのではないか、と映人は予想している。