毎日新聞社が共同通信社に再加盟することを骨子とする「包括提携」に、早速暗雲が立ちこめている。毎日新聞が共同通信の国内記事の配信を受けるのはもちろん、共同加盟社(地方紙)の記事が毎日新聞に掲載されることも、提携のアピールポイントだった。
ところが、一部の加盟社は猛反発。共同側は「不適切な表現があった」と釈明会見を開き、社長を含む役員に対して、報酬減額という異例の処分がくだるまでに発展している。共同通信は加盟社の費用負担で成立しており、共同にとって加盟社は「お客様」。共同と加盟社との力関係を印象づけた出来事だと言えそうだ。
包括提携については合意していなかった
2009年11月26日に開かれた会見では、朝比奈豊・毎日新聞社社長、石川聡・共同通信社社長と共同通信社理事会長の多田昭重・西日本新聞社会長の3人が登場。今回の提携で、いわゆる「発表もの」は共同の記事を掲載し、毎日の記者は分析・解説記事に労力を割けるようになることから、朝比奈社長は
「脱『発表ジャーナリズム』が進む(べき)道」
などと胸をはった。また、毎日新聞社が共同加盟社と個別に交渉して、加盟社の記事を毎日新聞に掲載するというのも、提携の重要なポイントだった。この点を、翌11月27日の毎日新聞1面の記事では、
「新聞社が通信社に加盟して配信記事を活用するだけでなく、共同通信社加盟の新聞社と記事配信などで協力関係を作るのは画期的」
と、自画自賛してみせたほどだ。
ところが、56ある加盟社のうち、現段階で協力が得られているとされるのは十数社。この方針が加盟社に十分に知らされていなかった様子で、反発する加盟社もあったようだ。例えば11月27日の朝日新聞のメディア欄では、加盟社の中でも「重鎮」とも言える存在の中日新聞社(名古屋市)の白田信行編集局次長は、
「競争相手である毎日と同じ記事が載ってしまう可能性がある。新加盟は好ましいと思っていない」
と、不満をぶちまけている。
こうした反発を受け、共同の石川社長は記者会見を開き、「誤解を与える不適切な表現があった」と陳謝。11月26日の会見直前の(加盟社が参加している)理事会で承認されたのは毎日の加盟だけで、包括提携については承認されていなかったことを明らかにした。
さらに、12月17日に開いた理事会では、石川社長と、交渉にあたった古賀尚文常務理事について、50%の報酬減額を3か月、そのほか役員4人に対して減額10%を1か月という処分を行うことを決めるなど、前代未聞の事態に発展している。この日の理事会では、(1)11月26日の記者会見で、「毎日新聞社と共同通信社、共同通信社、共同通信社加盟社による包括提携について」とのタイトルが使われ、「毎日新聞社と共同通信社、共同通信社加盟社は、さまざまな協力関係を強化していくこと同意した」と発表したが、表現が不適切であり、「3者が同意した」事実はない(2)「包括提携」の表現は、毎日新聞社、共同通信社、それぞれの共同通信社加盟社が、さまざまな分野で協力を目指すという意味で「旗印」として使用された、といった事柄が確認されたという。