降ってわいた「マニフェスト改変」 「小沢政権」にひれ伏す鳩山首相

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   「鳩山政権ではなく小沢政権」。そんな世間の風評ももっともだと思わせる民主党の予算要望書が政府に提出された。小沢一郎幹事長が中心になってまとめた2010年度予算の要望書には、ガソリン税の暫定税率維持や子ども手当の所得制限など民主党のマニフェスト(政権公約)に反する内容が盛り込まれた。鳩山由紀夫首相は「最終的には私が結論を出す」と言うが、あっさり小沢幹事長の要求に屈すれば「公約違反」の批判が高まるのは必至だ。

   鳩山首相が総選挙前の2009年7月27日に発表したマニフェストには、「暮らしのための政治を」のキャッチフレーズのもと「コンクリートではなく人を大事にする政策」が列挙された。目玉の一つが、子ども手当だった。子ども手当の背景には「社会全体で子育てする国にする」という理念がある。その理念から所得の大小にかかわらず一律に支給することに意義があるとされ、マニフェストでも所得制限については触れていない。

「可能な限り、予算に反映させていただきたい」

「マニフェストに反する」という批判にどう答えるか
「マニフェストに反する」という批判にどう答えるか

   ガソリン税などの暫定税率の廃止も民主党の目玉公約として喧伝された。マニフェストでは暫定税率の廃止によって2.5兆円の減税を実施し、「生活コストを引き下げる」としていた。子ども手当も暫定税率廃止も「暮らしのための政治」を象徴する政策として、その実現に期待して民主党に投票した国民も多かったといえる。

   しかしマニフェストは、民主党自身の手によって一部が否定されようとしている。小沢幹事長は12月16日、約20人の議員を引き連れて首相官邸を訪れ、鳩山首相に予算の要望書を渡し、

「これは党というよりも、全国民からの要望。可能な限り、予算に反映させていただきたい」

と強圧的とも受け取れる発言をした。要望書に掲げられた「重点要望」は18項目。党に寄せられた約2800件の陳情を整理して優先順位をつけたというが、その仕分けの過程や理由は明らかにされていない。

   高校無償化や高速道路無料化、農業戸別補償制度などマニフェストの公約どおりのものがある一方で、マニフェストになかった子ども手当の所得制限が明記された。ガソリン税などの暫定税率も、石油価格が安定していることを理由に「現在の租税水準を維持する」ことを求めている。

「最終的には私が結論を出す」

   小沢幹事長によるマニフェストの「改変」に対して、党内からは異論も出た。長妻昭厚労相は子ども手当について

「私としても所得制限なしで要求しているので、そういう考え方について関係各方面にご理解を求めていく」

と所管官庁の大臣として抵抗する姿勢を示す。だが、このような表立った反発は少数だ。平野博文官房長官は

「今まで言ってきたことと違うということに結論的になるならば、説明をしっかりしたうえでご理解いただく」

と早くも軌道修正を前提にしたかのような言葉を口にしている。民主党最大の実力者には誰も逆らえないのか。肝心の鳩山首相は12月17日、

「党からの要望は国民のみなさんの声だと思っていますが、マニフェストを守るというのも国民に対する誓いですから、大変重要なことだと思います」

とまた「玉虫色」発言。マニフェストへの配慮を示したうえで、ガソリンの暫定税率について

「国民のみなさんがどのようにお考えになっているかということも踏まえながら、真剣に検討して、最終的には私のほうで結論を出します」

と述べた。「最終的には私が結論を出す」というのは、普天間基地の移設問題についても鳩山首相が口にした言葉だが、いまだに明確な結論は示されていない。今度も似たような「言いっ放し」になるのではないか。

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