消費者金融大手の武富士が資金繰りに窮し、融資を圧縮せざるを得ない状況に追い込まれている。2008年に発行した転換社債の前倒し返済が避けられず、社債権者に減免や返済先送りを要請する事態に追い込まれた。一方、「事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)」での経営再建を進めているアイフルは、債権者の足並みがそろわず、波乱含みの展開となってきた。
武富士は08年、株価が一定水準を下回った場合は前倒し返済に応じる約束の転換社債を発行。その後の株価低迷で前倒しは必至となり、2010年6月に最大700億円の返済を求められる状況となった。このため11月、社債権者に返済の減額や延期を募り、12月9日に結果が公表された。
資金繰りはなお綱渡り状態が続く
武富士によると、減額や延期に応じたのは約250億円分の社債権者。約116億円分を12月中に前倒しで返済するかわりに、約33億円分を減額、残りの約101億円分は、10年7月から毎月10億円ずつ分割返済する方向でまとまった。
しかし、資金繰りはなお綱渡り状態が続く。今回の債務減額・延期を実施しても、10年9月末までに武富士が返済しなければならない借金は1800億円規模に達する。一方で、営業キャッシュフローと手元の現金を合わせても2000億円程度。差し引き200億円程度しか1年間の融資に回せない計算だ。
既に格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは、武富士の格付けをデフォルト一歩手前の「CC」に引き下げており、社債など新たな資金調達は難しい。かつては毎月700億円以上を融資してきた武富士だが、「最近の融資額は、その1割にも満たないのではないか」(アナリスト)との見方もある。このため武富士は、保有不動産の証券化などや、不良債権の売却による資金調達を検討している模様だ。今回の債務減額分33億円も、不良債権の売却による会計上の損失の穴埋めに充てられそうだ。
ゴールドマン・サックスが債権の買い取りを要求
一方、ADRによる再建を決めたアイフルだが、先行きは不透明感が増している。アイフルは金融機関に約2800億円の債務の返済猶予を求めているが、ここにきて米ゴールドマン・サックス(GS)がアイフルに対し、債権の買い取りを要求してきた。
アイフルとGSは、買い取り額を巡って水面下で交渉に入った模様だ。しかし、GSだけ特別扱いすれば、他の債権者の不満が強まるのは必至。全債権者が同意しないとADRによる再建手続きは成立しないため、GS以外にも希望する債権者と調整を進める可能性もある。
そうなればアイフルの負担は重くなり、再建に影を落とすことは避けられない。仮にADRが成立しても、10年6月には改正貸金業法が完全施行され、経営環境は一段と悪化することが予想されるため、金融機関の中には「最終的に法的整理に移らざるを得ないのでは」との声も漏れている。