米国で120年の歴史をもつビジネス・経済紙のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、2009年12月15日に有料の日本版サイトを本格オープンした。国内のWEBニュースは日刊紙を含め無料がほとんどだが、広告収入の落ち込みなどで「有料配信」を模索する動きが高まっている中で、WSJが先鞭をつけた格好だ。「質が良く信頼できる情報」を全面に押し出し、日本の読者を増やしていく方針だ。
WSJは米ダウ・ジョーンズ社が、約200万部(2008年ABC公査)を発行する米国では数少ない全国紙。米国ばかりでなく、70万人のユーザーがいる中国では、読まれるWEBサイトのトップ10に入る唯一の海外メディア。日本でも知名度は抜群だ。サイトを運営するのはウォール・ストリート・ジャーナル・ジャパンで、ダウ・ジョーンズ社が6割、SBIホールディングス(SBI・HD)が4割を出資した。
WSJ日本版 3年後の黒字目標
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版は、一般の読者が無料で読める記事のほか、ビジネスや投資上の有益な情報、過去記事すべての閲覧などは有料となっている。12月15日に開かれたオープニング・イベントで、北尾吉孝WSJジャパン代表取締役(SBI・HD代表取締役CEO)は、「有料で良質なコンテンツを提供する、革新的なメディアにしていきたい」と抱負を述べ、またWSJ日本版の小野由美子編集長も「日本版の配信は、わたしがWSJに入社したときから願ってきたこと。日本語なので、多くの人に読んでもらうことができる」と話した。
WSJのWEBニュースは、すでに米国で100万人の有料会員と年間購読料106万ドルを得ている。「有料オンラインとして成功しているメディアで、その記事は国内メディアに比べて、高い取材力と鋭い分析で投資家にとっても有益な情報が多い」(北尾氏)。広告収入に加えて、有料会員から得られる購読料収入で経営を支えるビジネスモデルを目指している。北尾氏は「有料会員の獲得など、具体的な目標はこれから立てたいが、3年後の黒字化は達成したい」と述べた。
国内メディアも本格的に有料化に向かう?
アジアでは2002年に開設した中国サイトも月間100万ページビューと好調で、小野編集長は「他に先がけて、世界中に配信した記事は多数ある。タイムリーでグローバルな視点をもったWSJの2000人の記者と編集者が届ける200本の記事から、1日20~30本を厳選して届ける」と日本版への自信を覗かせる。
WEBニュースを有料化する動きは国内メディアにも出ていて、すでにコンテンツの一部を有料化したメディアもある。産経新聞は東京朝刊の最終版をインターネットで配信、朝5時にパソコン上で読める「産経NetView」を提供している。「週間パック」と「月間パック」では過去記事も配信していて、電子紙面をマウスで操作しながら読める。また、日本経済新聞も2010年に「電子新聞」を創刊する。
ただ、「情報は無料が当たり前」という日本人は少なくないし、有料化による「読者離れ」も心配されている。そうしたなかで、米国サイトでの実績をもつWSJが日本版で成果をあげれば、国内メディアも本格的に有料化に向かうものと見られる。