日本で予定されている女子サッカー大会への北朝鮮チームの参加をめぐり、波紋が広がっている。国家公安委員長・拉致問題担当相が「制裁がかかっているので反対」と、入国に反対し、出入国管理業務を担当する法相も「基本的には入国は認められない」と、発言を後押ししたのだ。「政治をスポーツに持つ込むべきでない」という原則は広く知られているだけに、政府は難しい判断を迫られることになりそうだ。
問題になっているのは、2010年2月に東京の国立競技場と味の素スタジアムで開かれる予定の「東アジア女子サッカー選手権2010決勝大会」。5日間にわたって、日本・中国・韓国・北朝鮮の4か国が総当たり戦を行う。北朝鮮チームの参加は、09年9月の段階で発表されていた。
「北朝鮮籍者の入国は特別の事情がない限り認めない」
ところが、中井洽国家公安委員長・拉致問題担当相が、12月10日の会見で、
「制裁がかかっている段階なので、(入国には)当然反対だ。法務当局や官邸で議論して(入国の可否を)決めて欲しい」
と話した。さらに、中井氏は、主催者の東アジアサッカー連盟からの北朝鮮チームの入国についての申し入れが12月8日にあったことを明かした上で、
「安易に考えてもらっては困る」
と、開催時期が迫ってからの申し入れに不快感を示した。
北朝鮮国籍を持つ人の日本入国をめぐっては、06年10月に北朝鮮に対する制裁を強化する形で「北朝鮮籍を有する者の入国は特別の事情がない限り認めない」といった方針が打ち出されている。中井氏の発言は、これを念頭に置いたものとみられる。
制裁強化以降、スポーツや国際会議で、北朝鮮代表団が入国した例はない。例えば、北朝鮮は世界卓球に05年から4年連続で出場しているが、09年4月に横浜で開かれた大会では、北朝鮮側から参加を取りやめている。
ただ、「スポーツに政治を持ち込むべきではない」という考え方が広く受け入れられているのも事実。「中井発言」をめぐっては、世間の見方も割れているようだ。
「スポーツに政治が介入すべきでない」
ライブドアがポータルサイトで「入国反対発言は適切でしょうか?」というアンケートを行ったところ、「適切」との答えが53.2%なのに対して、「不適切」との答えが46.8%。拮抗していると言ってもよい。コメント欄を見ても、
「スポーツがそんなに偉いのか?相手国民の人権や自国民の安全を犠牲にしてまでやる必要があるのか?」
「スポーツに政治が介入すべきでない。一生懸命練習に励んでいる選手がかわいそう」
と、真っ向から対立している様子だ。
中井氏の発言があった翌日の12月11日には、千葉景子法相も、
「制裁措置がとられているので、基本的には入国は認められないと思う」
と、やはり入国には否定的な見解を示した。その一方で、
「スポーツということもあるので、政府全体として適切に対処すべき問題」
とも述べ、今後の対応に含みを残している。今後、関係省庁の副大臣クラスで検討が進むことになるが、難しい判断を迫られることになりそうだ。