「赤ちゃん揺さぶる虐待」年間100件以上 生き残っても3人に1人「脳に障害」

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子どもが憎いのではなく、無知による虐待だ

   SBSは医師が診断して初めて発覚する。一方でSBSの診断は難しく、医師が見抜けない可能性もあるという。厚労省研究班がSBSに関する諸外国の調査データをもとに推計したところ、「07年度の被害児は147人に、死亡例は37人に達していた可能性がある」としている。

   子ども虐待ネグレクト防止ネットワークの理事長で内科医の山田不二子先生によると、「硬膜下出血」「網膜出血」「びまん性脳浮腫」の3つがそろって起こり、かつ頭に外傷がない場合はほぼSBSだとわかる。しかし、3つの症状がそろわないケースのほうが山ほどあり、医師が見逃す可能性があると指摘する。

   諸外国に比べて、日本ではSBSの認知度が低いのが現状だ。SBSによって起こる乳幼児硬膜下出血は1970年頃に日本の医師の間ですでに知られていたが、転んだりして起こる「事故」だとして長年扱われてきた。

   1971年にイギリスで、1972年にアメリカで虐待だと認められたが、日本で小児科医が虐待として認識したのは2000年になってからだ。最近、逮捕されて公になる事件が目立っているのは、SBSが増えたのではなく、ようやく警察にも「事件」という認識が浸透してきたのではないか、と山田先生は見る。

   諸外国の場合は加害者の7割が男性だが、日本は女性が5割を占める。

「女性の場合は殺意がなく、無知によるものがほとんどで、泣きやませようとしてやっています。他の虐待とは違って、子どもが憎くてやるわけじゃないですし、SBSで死ぬ危険があると知っていればやらなかった人は多いと思います」

   大人の力を持ってすれば簡単に赤ちゃんの命を奪えるだけに、早急な対策が求められている。厚生労働省虐待防止対策室は07年から、妊婦に配る母子健康手帳にSBSについて記載するよう自治体に指導している。

   また一部の病院で新生児の両親(父親代わりも含む)を対象に「SBS予防教育プログラム」を実施している。赤ちゃんを揺さぶることの危険性について退院前に教育することが目的で、赤ちゃんの泣き声のCDを最大のボリュームで5分間かせて感じたことを話し合うとか、赤ちゃんが泣いた時の対処法を教えている。しかし参加率が母親は8割程度とまずまずなのに対し、父親は1割程度と低いのが現状だ。

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