不動産市況の低迷から、市場が冷え込んでいる上場不動産投資信託(J-REIT)が、もがき苦しんでいる。リーマン・ショック以降の景気悪化で、不動産賃料の下落や空室率の上昇、また銀行が不動産関連融資を控えているため、資金繰りに窮している状況が続いている。
Jリート市場は、東証REIT指数(2003年=1000)が2009年11月27日に814.88ポイントをつけて安値を記録。11月下旬はマンション分譲大手の穴吹工務店の経営破たんや、ドバイ・ショックで株式市場も急落。Jリート市場もそれに引きずられた形だ。
日本は増資もままならない
2009年12月11日の東証REIT指数は、終値で前日比6.51ポイント高の862.17ポイント。9月の1000ポイント台には及ばないが、11月末に比べればと上向いてきた。それでも、個人投資家の目にはなおJリートへの投資が「危うく」映っているようだ。
REITアナリストの山崎成人氏は、「いまの投資口価格(株価)の状況は、来春くらいまでは変わらない」とみている。
海外の主要国のREIT市場は09年3月を底に大幅な回復基調にあり、Jリートだけが出遅れている。不動産証券化協会(ARES)は、「海外は増資による資金調達が活発。増資で生じる利益の希薄化よりも、今後の成長性が評価されているためで、日本でも公募増資や新規の物件取得が再び動き出してくれば・・・」と期待する。増資によって調達した資金は、新たな投資物件を追加購入するのに使われるので、リートの成長要因として市場の評価は高まる。10月、日本アコモデーションファンド投資法人とケネディクス不動産投資法人がJリートとしては1年3か月ぶりの公募増資を発表、久しぶりに投資家の注目を集めた。11月には、ジャパンリアルエステイト投資法人と野村不動産レジデンシャル投資法人が続いたことで、停滞していたJリートも再び動き出した。
ところが、相次ぐ公募増資の発表にもかかわらず評価はさえない。
ただ、12月8日が払込期日になっていたジャパンリアルエステイトは、「11月は円高に伴う株式市場の急落などマーケットの状況が悪かったものの、逆に投資家にしてみれば安く買えることにもなった。計画どおり(約250億円)に調達できた」と話す。
11月末の平均利回り6.9%
一方、デフレ時に起こる賃料や稼働率の下落もJリートの成長を妨げる。しかし、前出の山崎氏は「賃貸市場の需給動向に注意する必要はあるが、過剰に反応することはない」という。デフレ時でもそれほど賃料は下がらないため、かえってJリートはヘッジ力があるとの見方もできる。
山崎氏は、「そもそもリートは、長期のインカムゲイン投資なのだから、株価で一喜一憂するのは間違い。予想配当金とその安定性を評価すべきだ」と指摘する。長期保有を前提にすれば、買った価格によってその後の配当利回りが決まってくる。株価が下がれば利回りが上がるので、銘柄によってはむしろ投資のチャンスにもなる。
不動産証券化協会によると、11月末のJリート平均分配金利回りは6.9%。前月に比べると、1.1%上昇した。