米軍普天間基地の移設問題は深い霧の中に入ってしまったようだ。国外移転の夢を描く首相と県内移設による早期決着を説く外相という「閣内不一致」の構造に加え、県内移設断固阻止を掲げる社民党が声をあげ、大阪府知事の「関西受け入れ論」まで飛び出して、もう何が何だかわけが分からない。まさしく「パンドラの箱を開けてしまった」(江田憲司衆院議員)状態だ。
鳩山由紀夫首相は、コペンハーゲンで2009年12月18日に開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)首脳会合の際にオバマ米大統領と普天間問題について話し合いたい意向を示していたが、米国側にはその気がない。
現行計画にこだわる米国と「百家争鳴」の日本
米国のギブズ大統領報道官は12月9日の記者会見で
「この問題は数週間前に話し合ったばかりだ(We did that like a couple of weeks ago)」
と会談実現に否定的な見解を述べ、鳩山首相も会談を事実上断念せざるをえなくなった。
ギブズ報道官は同じ記者会見で、
「我々は日本の前政権と合意を結んでいる。その合意の履行について議論するために作業グループを設定したのだ(We have an agreement with the previous administration in Japan. We set up a working group to discuss the implementation of that agreement)」
と語り、あくまでも2006年の日米合意にもとづくキャンプ・シュワブ沿岸部(沖縄県名護市)への移設を求めていく姿勢を鮮明にした。
翻って日本をみれば、百家争鳴。岡田克也外相が嘉手納基地への統合案を提案すれば、社民党の福島瑞穂党首は連立離脱をちらつかせながら県外移設を迫る。国民新党から関西空港の活用案が出ると、大阪府の橋下徹知事が「話がくれば検討したい」と応じたりもした。
鳩山首相の第一候補ともいわれるグアムを視察した北澤俊美防衛相が「日米合意から大きく外れる話だ」と否定的な考えを明らかにすると、社民党の重野安正幹事長が強い不快感を表明。北澤防衛相は平野博文官房長官から「軽率な発言」と注意されて、「全面的に否定したということではない」と釈明せざるをえなくなった。