本州と九州を結ぶ寝台列車が2009年春に「全廃」されたことは記憶に新しいが、今度は首都圏と北陸地方を結ぶ列車が2010年春にも廃止される可能性が強まっている。仮に廃止された場合、青い客車で走る「ブルートレイン」は、3路線が残るのみで、いよいよ「絶滅」が近くなってきた。
JRグループが10年3月に予定しているダイヤ改定で定期運転がなくなる見通しなのは、上野と金沢とを結ぶ急行「能登」と寝台特急「北陸」。
平日の乗客は少ないが、土日は比較的盛況
特に「北陸」は、1950年に運転を開始した歴史の長い路線で、現在4路線しか残っていないブルートレイン(青い客車を使用した寝台特急列車)のうちのひとつだ。上り・下りともに22時~23時台に出発し、翌朝6時過ぎに目的地に着くというスケジュールで、かつてはビジネス路線としても人気が高かった。
00年6月には、金沢が地元の森喜朗元首相(当時)も、21時半過ぎまで金沢市内の日本料理店で会食し、そのまま「北陸」で東京に移動したこともある。
ところが、飛行機と比べて割高感があることや、格安な夜間高速バスが台頭し、乗客数は減少の一途。「あさかぜ」(東京-下関)「銀河」(東京-大阪)など、ここ10年ほどで廃止が相次いでいた。09年3月には、「はやぶさ」(東京-熊本)と「富士」(東京-大分)が廃止され、九州と本州を結ぶブルートレインが「全滅」、大きく報じられたのは記憶に新しいところだが、首都圏と北陸地方を結ぶ「北陸」も、この流れには逆らえなかった形だ。
北陸地区で鉄道遺産の保存・活用に向けた活動を行っているNPO法人「ヘリテージ・オブ・レイル北陸」(石川県小松市)理事長の岩谷淳平さんは、
「確かに平日の乗客は少なくなっていましたが、土日は比較的盛況でした。ただし、そのお客も、3~4割引の切符で乗っている人が多く、採算が悪くなっていたのも事実。高速バス、特に格安なツアーバスや、5000円ぐらいで泊まれるビジネスホテルの台頭が(客離れの要因として)大きいと思います。廃止は、経営上の判断なので仕方ありません」
と話す。その上で、
「(全国で多様な車両が走っていた)『国鉄文化』のようなものに対する理解を高めていくことが必要。鉄道車両に遺産としての価値を認めて、地域として(これらの車両を)保全していく動きがあっても良いのでは」
といい、ダイヤ改定で「お役ご免」になる客車の行く末を案じている。