二大広告代理店の電通、博報堂が年末に発表する2009年注目商品ランキングが出そろった。トップ10の上位を占めたのは、エコカー(ハイブリッド車含む)や、エコポイントの対象になった地デジ対応薄型テレビといった省エネ関連商品だ。政府の経済対策によって割安感が高まったのが主因とみられる。
所得減少への生活防衛から同じ品質なら価格のより安い商品へ、という意識はある意味当然だが、それをきっかけに消費者の生活に対する価値観そのものを見直し、身の丈スタイルに合った「成熟した消費行動」に移りつつあるというのが両社共通の分析で、景気が回復してもこの流れは当分変わらないだろうと予測している。
単なる節約志向の流れだけではない
博報堂の「09年商品/サービス興味度ランキング」の結果は以下の通りだ。①新型インフルエンザ対策商品(マスクなど)②訳あり商品③地デジ対応家電④エコポイント商戦⑤エコカー⑥プライベートブランド(PB)⑦1000円高速ドライブ⑧次世代エネルギー商品⑩0円コーヒー/カフェ――。
電通調査では3位にユニクロに代表される低価格ファストファッション、6位に高速道路の自動料金収受システム(ETC)が入ったが、他は博報堂調査とほぼ同一商品が上位に並んだ。
博報堂がヒット商品の背景にあるいくつかの環境変化を列挙している。第一は「未来の土台」に着目する消費者意識だ。政府が打ち出す様々な政策で、地上波がアナログからデジタルに全面移行したり、経済の成長よりも地球環境に配慮した経済への構造転換が進んだりしている。嗜好性が強い消費よりも、新時代へのコストとして受け入れられたのが地デジ対応商品やエコカーというわけだ。
第二は、「もっと贅沢を」という志向から「身の丈」スタイルへの意識変化。メーカー品と同じ品質なのに価格は2~5割安いとされるPB商品、規格にはまらない野菜や、目立たない傷があるために価格を引き下げた商品に人気が集まったのは、単に節約志向の流れだけではなく、「高級であることより、身の丈にあったモノを目利きして暮らすほうが快適」(同社のネット調査で86.8%が回答)という意識変化の表れと見られる。
「下取りセール」や「カーシェアリング」が伸びる
「所有欲」を満たす消費から、「共有」によりむだを極力排除しようという動きも強まった。その象徴が「下取りセール」や「カーシェアリング」といった新しい消費形態が伸びていることだ。同社は「東京都心部などでは深夜の交通手段なども充実し、高額の駐車料金まで払って自家用車を保有するよりも、他人と共有する車を必要なときだけ利用し、それで浮いたおカネを趣味など活用した方が満足できる」という。
15位にランクインした「自転車ブーム」のように、「安価」を求める節約志向だけでなく、それによって健康・体力増進につながることに満足を見出すのが最近のトレンド。まだまだ厳しい経済環境が続く中で、嗜好品やぜいたく品よりも、日常の「質」に目を向けて、「生活の土台交換」へ進んでいく――博報堂は来年の消費動向をそう読んでいる。