高い失業率とデフレ圧力は長引く
さらに、FRB(連邦準備理事会)が行った「信用緩和策」(民間の社債、CPなどをFRBが買い取るなど、かつて行われた日銀の量的緩和をさらに強化した非伝統的な金融政策)によって、試算によればGDPギャップを将来にわたって8%程度改善できる効果がある。したがって、アメリカは大きなGDPギャップを財政・金融政策によって完全に穴埋めしている状態だ。ヨーロッパ諸国も同様に、財政政策と金融政策によって、金融危機のGDPギャップをほぼ埋めている。
日本はどうなのか。麻生自民党時代に、国際的には財政支出はGDP2%程度だといって、たしかに補正予算を通して14兆円の景気対策を行った。しかし、金融政策はほとんど行わなかった。その結果、今でもGDPギャップは世界最悪の部類になっている。先月来日したガリアOECD事務局長は、菅直人副総理・経済相に会って、日本はGDPギャップが大きくデフレになっているので、日銀はデフレと闘うべきだと進言した。写真に示した図は、最近のOECDサイトに掲載されたもので、中央銀行のバランスシートを示している。図右側の08年途中から09年の箇所を見ると、アメリカとユーロ圏に比べ、いかに日銀が金融緩和策を怠っていたかがわかる。
先週、日銀の打ち出した政策で一時株式市場は回復したかのようだが、白川日銀総裁のいう「広い意味での量的緩和」という表現はミスリーディングで、実態は日銀が10月末に行った「12月末でのCP、社債買い取り中止、来年3月末での企業支援打ち切り」を復活させた程度である。
財政政策でも2次補正で連立政権の間でもたつき、結局7.2兆円規模で決まったが、真水ベースでは4兆円程度の話だ。金融政策がほぼゼロ回答であることから、GDPギャップ35兆円を埋めるのはほど遠い状態だ。となると、GDPギャップは当分なくならず、高い失業率とデフレ圧力は長引くだろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。