もしも、首都圏に成田空港、羽田空港のほか、横浜市沖合に横浜空港があったらどうなるだろうか。横浜空港は国内線専用空港で、羽田の需要とバッティングするのは必至だ。首都圏では、誰も横浜に空港が必要とは思わないだろう。
ところが、関西では関西国際空港、大阪(伊丹)空港のほか、神戸空港の3空港が隣接し、需要を食いあっている。政府の行政刷新会議の「事業仕分け」で関空に対する国の補給金が凍結とされ、「関西3空港の棲み分けが明確でない」と指摘されたため、3空港の見直しがにわかにクローズアップされてきた。
3空港の関係を見直さない限り、予算は凍結
地元では伊丹、神戸空港の廃止論のほか、大阪府の橋下徹知事が沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題と絡み、関空への移設について「話が来れば基本的に(議論を)受け入れる方向で検討したい」と発言して物議を醸すなど、百家争鳴の状態となっている。
関西には、1958年に政府が設置・管理する伊丹空港が開港。その後、伊丹空港は大阪市都心部の騒音が問題となり、大阪湾の沖合を埋め立て、24時間空港の関空が94年に株式会社方式で開港した。関空開港後も伊丹空港は国内専用空港として、規模を縮小して存続した。さらに06年には神戸市沖合を埋め立て、神戸市が設置・管理する神戸空港が開港した。
08年度の旅客数は大阪市都心部へのアクセスの良さから、国内専用の伊丹が1538万人でトップ。国際線と国内線が乗り入れる関空が1533万人と、ほぼ互角の勝負を展開するが、神戸は258万人と振るわない。関空は国際ハブ(拠点)空港を目指すが、着陸料の高さから、韓国、シンガポールなどにハブ空港の機能を奪われているのが現状だ。
政府の2010年度予算をめぐる事業仕分けは、関空に対する国土交通省の補給金(要求額160億円)について、「関西3空港の関係を見直さない限り、傷口に絆創膏を貼る程度にすぎない」との批判が高まり、予算は凍結と判定された。これを受け、関西の経済界、自治体代表らで組織する「関西3空港懇談会」と呼ばれる組織が、3空港見直しを議論し始めた。記者会見などでも首長や財界代表の発言が目立つ。