デフレ、円高、株安の「三重苦」で日本経済は危機的状況に陥るという観測が広がっている。民主・鳩山政権が効果的な経済対策を打ち出せない状況に対して、メディアでは「民主不況」という言葉が目立つようになった。
日経ビジネス2009年11月23日号は「『民主不況』に現実味」と題した記事で、「予算を『削りながら増やす』作業で、景気を強く後押しする政策のアイデアは見えない」と鳩山政権の政策不在を批判した。週刊エコノミストも11月17日号で、「『民主不況』上乗せで年末にかけ景気深刻 2番底の深さ」という特集を組んでいる。
「民主党不況で大失業時代へ」と書いた週刊朝日
師走に入ると、さらに週刊誌のボルテージはアップしていく。週刊文春12月10日号は「鳩山デフレ 超ド級不況が来た」という10ページにわたる特集記事を掲載。「円高容認」ともとれる発言をした藤井裕久財務相や、公表前にGDP速報値を漏らしてしまった直嶋正行経産相らの言動を取り上げて、「経済オンチぶりを露呈する閣僚たち」とこきおろした。
極めつけは、「民主党不況で大失業時代へ」と大見出しを打った特集で民主党の「経済無策ぶり」を批判した週刊朝日12月18日号だ。巻頭記事では、「ミスター円」こと榊原英資早大教授の
「現状の民主党の政策は『中途半端』です。自民党の一部で『政権交代したら不況になった』と言っていますが、このまま不徹底な政策を続ければ、実際にそうなってしまうでしょう。まさに『民主党不況』になってしまいます」
という言葉を紹介し、2010年前半には景気が腰折れして「二番底」がやってくると予測している。
2010年前半の日本経済は再びマイナス成長?
だが、このような「民主不況」という表現に反発する声もある。サンデー毎日は12月20日号で「『民主不況』という短絡とマスコミ報道」という記事を掲載。
「鳩山政権の経済運営には粗い点が散見されますが、無駄なコンクリート(公共事業)に浪費を重ねた自民党の政策から大きく切り替わる点を見逃すべきではありません。効果が出るまでは産みの苦しみというべきでしょう」
という第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミストの発言を引用して、「マニフェストで公約した政策の効果が出ていないうちから『民主不況』と騒ぎ立てるのはあまりに短絡的というわけだ」と反論している。
不思議なのは、このサンデー毎日にも榊原英資・早大教授のインタビュー記事が載っているのだが、その発言が週刊朝日とは正反対なことだ。
「今、日本が直面する円高や株安の問題は政権交代とは関係ありません。直近の円高はドバイ・ショックなど外的要因、株安は企業業績の低迷が主な原因です。民主党の政策を、ことさら問題視するのは正しい見方ではないのです」
週刊朝日とサンデー毎日のどちらかの記者が不正確な記事を書いているのか、それとも榊原教授の発言がブレているのか。
ただ、どちらの榊原教授も、日本経済が「二番底」の危機にある点を認めているのは一緒だ。エコノミストからは、「2010年前半の日本経済は再びマイナス成長に転じる」(日本総合研究所・枩村秀樹主任研究員)という予測も出ている。
このまま民主党が中長期的な成長戦略を打ち出せず、経済対策への不安を払拭できなければ、「民主不況」という言葉が浸透するのも時間の問題かもしれない。