2010年6月に地球帰還を予定している小惑星探査機「はやぶさ」への人気がネット上で高まっている。何度も故障や通信不能状態を繰り返しては修復・補填し、再び軌道修正する健気な姿に魅せられてか、「はやぶさ」ファンが急増しているようだ。
動画サイト「ユーチューブ」には、アニメーションなどを駆使した約50の関連動画がアップされ、「絶対帰って来い!待ってるから…」「日本を支える技術者達に乾杯!!」などと「はやぶさ」の帰還とそれを支える技術者たちを応援するコメントが多数あがっている。
トラブルに見舞われ続けた
「はやぶさ」は2003年5月、火星軌道近傍の小惑星「イトカワ」にある物質(サンプル)採取を目的に、宇宙科学研究所(現:独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「宇宙科学研究本部」)が打ち上げた小惑星探査機だ。
日本の宇宙開発関係者の期待を背負った「はやぶさ」は、マイクロ波放電型イオンエンジンの運用や小惑星の精密な科学観測、地球と月以外の天体からの離陸成功など、いくつもの「世界初」の快挙を成し遂げてきた。また、2005年夏には「イトカワ」に到着しており、サンプル採取に成功している可能性もある。
ただ、トラブルに見舞われ続けた。4基のイオンエンジンA~Dを搭載していたが、打ち上げ直後にAのイオンを噴射する装置の出力が不安定となり、運転を見合わせた。また、2005年12月には燃料漏れ、機体の姿勢喪失、通信の途絶など難題が相次ぎ、当初の2007年6月の帰還予定を延期せざるを得なくなった。さらに、07年4月にはエンジンBの推力を維持する中和器が故障。09年11月4日にはDの中和器の故障も判明し、異常を検知した「はやぶさ」が自動で停止していることが確認された。
「はやぶさには命が宿ってるとしか思えん」
一方で「はやぶさ」は、度重なるピンチをその都度、補助エンジンや代替システムなどを駆使して故障箇所を補填、軌道を修正して乗り切ってきた。Dの中和器の故障が確認された2週間後の2009年11月19日には、過去に故障して停止していたエンジン2基の装置を組み合わせて、止まっていたエンジンの噴射に成功。「はやぶさ」は10年6月の帰還に向けて再び動き出している。
この「はやぶさ復活」のニュースが報じられると、大手SNS「ミクシィ」や個人ブログには、
「はやぶさには命が宿ってるとしか思えん」
「涙が出てきてとまらない」
「日本の科学技術力の鑑!」
「待ってるぞ~必ず帰って来いよ~!」
といった感動し、帰還を願う声が多数書き込まれた。
はやぶさプロジェクトマネージャーの川口淳一郎教授は、こういったネット上の応援について、「大変心強いです。そういった声は何よりの励みになります」と喜びを隠さない。
しかし、10年6月に「はやぶさ」が帰還する可能性は、五分五分だという。
「これまで幾度となく危機を乗り越えた『はやぶさ』の運に賭けてみるしかない部分があるのも確かです。現在『はやぶさ』のエンジンは、地上で実験したことのない特殊な状態で動いており、私たちも手探りで運用している状況です。ただ、どんな形になろうとも帰還に尽力したい、プロジェクトをやり遂げたいと考えております」