鳩山政権の懸案の一つである米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の移設問題は、年内決着が困難な情勢となった。早期決着に反対してきた社民党の福島瑞穂党首は「本当にうれしい」と素直に喜んでいるが、日米関係に悪影響が出る恐れから、岡田克也外相は「非常に懸念している」と渋い表情だ。肝心の鳩山由紀夫首相は「県内も国外もどちらも可能性がある」とあいかわらずはっきりしない。
普天間問題をめぐっては2009年11月に日米閣僚級の作業グループが設置され、岡田外相を中心に年内決着を目指した検討が続けられてきた。アメリカ側は名護市の辺野古沿岸部に移設するという現行計画での早期決着を求め、閣内でも岡田外相らは県内移設に向けて動いていたが、連立与党の一角を占める社民党と国民新党から「現行計画で早期決着すべきではない」という異議が出ていた。
福島党首「急いで決着がつかなくて、本当にうれしい」
「越年」が濃厚になったのは12月3日。党首戦を翌日に控えた社民党の福島党首が連立政権離脱の可能性をちらつかせながら、現行計画に反対する姿勢を強く打ち出したためだ。もし社民党に離脱されると与党は参議院で過半数を割ることになる。それを避けるためには、普天間問題を先送りして、社民党との亀裂を決定的にしないことが必要だったのだ。
社民党では、党首選への立候補を検討していた沖縄2区選出の照屋寛徳衆議議員が、普天間問題に対する福島党首の姿勢を評価するとして出馬をとりやめたため、福島党首の4選が無投票で決まった。福島党首は12月4日の会見で、
「社民党の議員がよく働きかけて、総理自身が年内の決着はしないということをおっしゃった。また、県外や国外も含めたあらゆる可能性も視野に入れるとおっしゃっている。辺野古の沿岸部に海上基地を作ると12月中に急いで決着がつかなかったことは、本当にうれしいと思っています」
と満足そうな笑みをみせた。
鳩山首相、相変わらず「揺れる」発言
一方、対照的に渋い表情を見せたのが、年内決着に向けて東奔西走してきた岡田外相だ。「普天間基地の危険性を一刻も早く除去することが重要」という岡田外相は10月23日の記者会見で、時間的な制約の観点から「県外というのは事実上選択肢として考えられない」という見解を表明。現行計画か、県内の嘉手納基地への統合案を念頭に、閣僚級作業グループでアメリカ側と協議を進め、沖縄を訪問して現地の様子を視察するなどしてきた。
ところが連立政権内の反発によって、早期決着は遠のくことになった。岡田外相は12月4日の会見で「連立政権が壊れるということは避けなければならない」と社民党への配慮を示しながらも、「越年」がもたらす悪影響について、
「もちろんアメリカの議会の問題もある。また年を越したことで、移転実現を遠のかせることになるのではないか、つまり、今の普天間の危険な状況が長く続くことになる可能性がある」
と語り、外相としての懸念を明らかにした。
このような混乱状況のなか、鳩山首相の念頭には「グアム移設案」があると伝えられている。その一方で、4日朝には「当然のことながら辺野古は生きている」とも発言。県内なのか県外なのか、いまだにはっきりしない状態だ。