賃金未払いやセクハラなど不当な待遇の改善を求めて、キャバクラ嬢たちが労働組合を結成することになった。カリスマキャバ嬢がテレビに出演したり、「なりたい職業」の上位に登場したりするなど、華やかな面に注目が集まるキャバクラの世界だが、その裏で労働関係をめぐるトラブルも頻発している。
全国でも例がないというキャバクラ嬢の労働組合「キャバクラユニオン」(仮称)。現在、結成準備中で、2010年1月に東京の個人加盟労組「フリーター全般労組」の分会として発足する予定だ。違法な労働実態を改善するため経営者と団体交渉を行うほか、電話相談などを通じてキャバクラで働く女性を支援していく。
当日欠勤の罰金は5万円
メンバーの中心となっているのは、東京・練馬のキャバクラで働いていた20代の女性。セクハラなどの問題があって店を辞めようとしたが、経営者から「辞めるなら給料を払わないぞ」と脅された。結局、退職時に約100万円の未払い賃金を受け取ることができず、フリーター全般労組に相談することになった。
賃金未払いとともに問題になることが多いのが、法外な金額の「罰金システム」だ。「10年前、私もキャバクラで働いていた」という作家の雨宮処凛さんは、ウェブサイト『マガジン9条』で当時の体験を綴っている。雨宮さんによると、当時勤めていた店の罰金は、「遅刻1時間5000円」「無断欠勤1万5000円」「当日欠勤(カゼひいて休むとか)1万円」というものだったという。
「キャバクラで働く女の子の多くは、こういった『罰金』が違法行為だということなど知らない。よって堂々と罰金が給料から引かれ、一緒に働いていた女の子(遅刻、無断欠勤の常習犯ではあった)なんかはなんと給料が『マイナス』になるという転倒まで起きていた」
そう記す雨宮さんは09年8月末、あるキャバクラ嬢の労働争議に加勢することになったのだが、その女性の当日欠勤の罰金は5万円だったという。「この10年の間、誰もそのシステムを正面切って批判してこなかったからこそ(中略)、罰金の額は10年で5倍にまで跳ね上がっていたのだ」と雨宮さんも驚く法外な金額だ。
最低でも時給3000円~5000円のカラクリ
だが罰金(制裁金)については、労働基準法で上限がきちっと決められている。仮に就業規則に減給制裁の規定があったとしても、その金額は一日の給料の半分を超えてはいけないのだ。キャバクラで働いた経験をもつフリーター全般労組の根来祐さんは
「罰金システムは大抵のキャバクラで行われていて、経営者はそれが常識だと言うが、法律に照らせば違法な場合が多い。それでもキャバクラ嬢たちは『自分のほうが悪い』と思いがち。そんな彼女たちの低い自尊心を利用して働かせている」
と憤る。雑誌やネットの求人広告には、最低でも時給3000円~5000円をうたうキャバクラの募集が多数出ているが、根来さんは「広告の時給ほどもらえるわけではない」と警告する。
「ドレスの費用や髪のセット代、花代などでいろいろひかれてしまう。自分で化粧をしても化粧代を取られ、福利厚生なんて全くないのに福利厚生費という名目でひかれることもあるんですよ」
お金をめぐるトラブルだけではない。店長が権限を利用してセクハラをしたり、客の理不尽な行為を店のスタッフが見て見ぬふりをしたりするケースも後を絶たないようだ。
最近は不況の影響で、派遣契約を切られたりバイト先をクビになったりして、仕方なくキャバクラで働き始める女性も多い。だがその先に待っているのは、決して生やさしい世界ではない。